定年を迎えた人材の雇用延長について、賃金制度の充実をはかる企業が出てきている。高年齢者雇用安定法が今年4月に改正され、希望者について65歳まで雇用延長を義務付けられるようになるのを見据えた取り組みだ。

三菱重工は定年前の業績を延長後の賃金に反映させたり、延長後も能力に応じた業務を割り当てるといった方向で検討している。三菱電機も雇用を延長した社員の給料を約2割引き上げるという(8日付日経新聞)。

雇用延長後の待遇を向上させようとするのは、熟練技術や専門技術、経験やマネジメント能力を持つ人材の流出を防ぐためだ。若手教育を担ってもらうほか、他社や他国から好条件で招かれ、技術が流出するのを防ぐ狙いもある。

アルジェリアのテロ事件で命を落とした日揮社員や派遣社員の中にも、60代以上のベテラン技術者がいた。彼らは技術力に加え、語学力や交渉力、マネジメント力を活かし、命をかけて現場を引っ張っていた。日本のため、世界のために生涯現役で働ける高齢者は数多く、厚遇されるべき人も多いだろう。

だが、高齢者の雇用延長が「新規採用や若手社員の処遇に影響を与えかねない」と慎重に見て、総人件費が増えないよう取り組む企業もある。IHIは定年を60~65歳の間で選ぶことができる「選択定年制」を導入する。トヨタ自動車は定年後のハーフタイム勤務などを検討。NTTグループは、40~50代の平均賃金カーブの上昇を抑える制度を今年の秋に開始する予定だ(同前)。しかし、これらは「一定の人件費のパイを分け合う」という発想から抜け出せていない面がある。

一方、高齢者を中心に新たな産業を立ち上げた例もある。有名なのは、徳島県上勝町で高齢者らが山林の葉っぱを料理の「つまもの」として売り出し、年商2億円以上のビジネスを作り出したケース。同町では「つまもの」の生産量の調整も高齢者がパソコンでやっているが、高齢者に使いやすい機器や機械を開発すれば、人材活用の可能性はさらに広がる。

今後、企業は、年齢に関わりなく、多くの価値を生み出せる人材を活かす努力をすべきだ。それによって高齢者は生きがいを持ち続けることができ、経済的に自立する高齢者が増えれば年金問題も解決する。日本は高齢者という貴重な経営資源を活かし、世界をリードする「生涯現役人生」モデル国家を目指すべきだ。(晴)

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