インドで年収約340万円以上の富裕層への増税が議論されており、実業界から「有能な富裕層が税率の低い国に流出する恐れがある」と批判の声が上がっている。6日付フジサンケイビジネスアイが報じた。

同国は経常赤字が増える傾向にあり、その対策として歳出削減と税収増を目指している。富裕層増税はその一環として挙がっており、さらに、現在はまだ導入されていない相続税も提案されているという。

富裕層への増税は、各国が財政難対策として取り組んでいるが、これらの国々を見渡せば、インド実業界の「恐れ」はその通りになっていることが分かる。

フランスでは、年収約1億3千万円以上の富裕層に対する所得税を42%から75%にあげる動きがあり、大富豪で俳優のドパルデュー氏などの国外脱出が相次いだ。ヨーロッパ内の移動が自由で、言葉も通じるため、フランスの富裕層はベルギーやスイスなどに国籍を移す人が多いという。こうした動きを受け、税率は65%で落ち着くようだが、増税で富裕層が逃げ出す典型例と言える。

一方で、富裕層への税率を下げて税収が増えたケースもある。代表例としては、ロシアで2001年、個人所得税を一律13%にするフラット・タックスを導入した後、同税収が実質25%も増えた。税率が13%まで下がると、人々は節税をする手間や費用よりも、素直に支払った方が安くつくと考えるという指摘がある。また、シンガポールや香港は、毎年のように税率を下げているが、税収は増え続けているという。

日本では1月24日、2015年から年間所得4000万円以上に対し所得税の40%から45%への増税と、相続税の最高税率が50%から55%に上がることが決まった。これを受けて、日本の富裕層がシンガポールなどに脱出する動きが報じられた。この富裕層増税による税収増分は3000億円と見積もられているが、所得税収全体にあたる13.5兆円(2011年)の、たったの2%にすぎない。

税収に2%程度のプラスしかない日本の富裕層増税。日本政府は、所得税収25%増に成功したロシアに学び、「減税」による税収増を目指すべきだ。(居)

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