国産ロケット「H2A」22号機が27日、種子島宇宙センターから打ち上げられた。今回、搭載されたのは政府の情報収集衛星で、電波で地上を撮影し、夜間でも地上の1メートル程度の物体を判別できる。事実上の偵察衛星だ。軌道投入が成功すれば、現在運用している4基の衛星と合わせて、地球上のあらゆる地点を一日一回以上観測できるようになる。

またこれに先立つ25日、政府の宇宙開発戦略本部は、2013年度から17年度までの次期「宇宙基本計画」を決定。日本版GPSの整備、気象衛星や通信衛星などの産業振興を柱に据えた。H2Aの打ち上げを含め、宇宙開発において安全保障や産業振興の分野に重点が置かれることになる。

こうした宇宙分野による投資の動きは歓迎したいが、一方で気になる点もある。

宇宙基本計画では、日本が毎年約400億円を拠出している国際宇宙ステーション(ISS)への予算について、「産業に役立つような成果が明らかでない」として16年度以降削減する方針が盛り込まれ、有人宇宙活動や一部の惑星探査計画は縮小される。

すぐに成果が上がらないという理由で縮小するのは考えものである。宇宙分野は、現在の自動車産業のように新たな基幹産業にすべく、政府が主導して育てていく必要があるからだ。

アメリカでは今月中旬、宇宙ベンチャー企業のビゲロー・エアロスペース社が2015年末までに宇宙ホテル実現に向けてISSに実験施設をつくる契約をNASAと交わした。建設後は、宇宙飛行士が2年間、施設の耐久性などを検査する予定だ。同社は、最大12人が滞在可能な独立型の宇宙ステーションを16年までに建設する計画も進めており、複数の富豪が同社に財政支援を申し出ている(26日付ブルームバーグ)。 大きな夢にはお金を惜しまないアメリカのスケールの大きさを感じさせる。

日本政府は、限られた予算をどう配分するかという発想から抜け出し、「どうしたら使うお金を増やせるか」を考えるべきである。官民共同のファンドによる国家未来事業債や、宇宙技術を国防とリンクさせた防衛債などを発行して資金を集めてもいいだろう。

そうして宇宙産業の基幹産業化に成功すれば、数百万人単位の雇用を生み出すことができて経済が潤うばかりか、中国が進める宇宙空間の支配を抑止することもできるだろう。政府は宇宙を新たなフロンティアと位置付け、積極的な投資を行うべきである。(晴)

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