教師による体罰が原因で高2男子生徒が自殺した大阪市立桜宮高校の問題で、橋下徹大阪市長は同校体育系2科の今年度の入試を中止することを宣言。これに対し、受験生、保護者、一般市民からも「行き過ぎだ」と抗議が殺到している。

橋下市長は、15日の記者会見で、2月20、21日に行われる予定の同校の体育科とスポーツ健康科学科の入試を中止するよう、市教委に要請したことを明らかにした。その理由を、「クラブ活動の在り方を変えるなら保護者や生徒の意識も変わってもらわないといけない。このまま入試をすれば、同じ意識で生徒が入ってくる」と説明した。

翌16日、市教委に対し、同校普通科の入試実施についても最低条件として「校長や教員の総入れ替え」を求めた。

さらに17日には、体育系2科の入試中止方針を市教委が拒否した場合、市長として強権発動する用意があるとし、「予算の執行権は僕にある」と、教師の給与など予算面で対抗措置を取ることを明言した。

この橋下氏の方針に対して、市教委や市のホームページなどに抗議の電話やメールが相次いでいる。「受験生には罪がない」「子供の夢を摘むのか」「無関係の受験生を巻き込むのはおかしい」など。

橋下氏はこうした声に対しても、「一番重要なのは亡くなった生徒のこと。(受験生は)生きてるだけで丸もうけ。またチャンスはある」と反論している。

確かに体罰教師と、それを見逃した学校側の罪は大きい。しかし、すべての教師を入れ替えるとか、入試を中止するというのは、一部の罪を全体責任にするばかりか、受験準備をしている受験生まで切って捨てるわけで、どう見てもやり過ぎだ。

この人のいつものやり方で、まずハッタリをかまして大向こうをうならせ注目を浴びる。世論の旗色が悪いと見れば、スルリと方向転換をする。おそらく、市教委側から人事異動をある程度引き出した段階で、「受験生に配慮する」という方向で収めるつもりだろう。

しかし、これでは大学認可をほぼ決めた段階で「不認可」を打ち出して注目を浴び、旗色が悪くなって一転「認可」とやった田中真紀子・前文科相のやり方と同じではないか。田中氏はその直後の衆院選で見事に民意が離れ、落選した。

自己顕示のために受験生を「人質」に取るようなことをするのは、体罰教師のさらに上を行く「権力の暴走」だと知るべきだ。パンチをかまして役人をやっつけているつもりだろうが、ただ大きく吠えるだけで根本的解決にはならない。このような暴走市長が国政を牛耳ったらとんでもないことになるのは、今回の一件でもはっきりと見えてきた。(仁)

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