『夜のピクニック』などで知られる作家、恩田陸氏の小説『夢違(ゆめちがい)』は、昨年の10月から12月にかけて放送されたドラマ「悪夢ちゃん」の原案だ。主人公の少女が夢で見る悲惨な未来が次々と現実になるというドラマは高視聴率だった。

その恩田氏が2010年夏に書いた「東京の日記」という短編がある(『NOVA2書下ろし日本SFコレクション』河出文庫所収)。

この小説は、近未来の東京を訪れた外国人の見聞を記したという設定。20世紀終盤の「阪神・淡路大震災」に続いて、今世紀に起きた「あの地震」が過去形で語られる。政府は「復旧の秩序ある実施」を名目に戒厳令を敷き、国民生活からは自由が奪われていくという物語だ。「あの地震」のあと、今度は「富士山が噴火する」という噂が広まる。「都内一斉に停電する」様子なども描かれている。

2011年3月11日の東日本大震災後にこれを読むと、現実との符合が多いことに驚く。大震災後、各種週刊誌や大手新聞に、富士山などの噴火を恐れる記事が連続して出たことや、まるで戦時中のような雰囲気だった「計画停電」の実施を思い起こす人もいるだろう。

作家のインスピレーションによって物語が創られる。その物語は未来を見通すものもあるということだろう。

不幸な災害による事故を奇貨として、もともとやりたかった「原発廃止」を強引に推し進めた菅直人元首相や、震災復興を口実に恒久的増税を通してしまった野田佳彦前首相のことを考えると、この小説での「戒厳令」に象徴されるような強権が、民主党政権下では、いつの間にかまかりとおっていたことが、あらためて痛感される。

選挙で民主的に選ばれた民主党だが、党名とは逆に、実質的には「社会主義的全体主義国家」を志向していた。そのような政党が大震災や国防の危機を招いたことを多くの国民が肌で感じた。

民主党政権のような勢力が復活するようなことは、もう真っ平御免である、というのが多くの人々の正直な気持ちだろう。国民の自由を大事にし、繁栄の未来を築く政治が、今こそ求められているのだ。(賀)

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