元旦の新聞各紙の社説を比べると、それぞれが「国家観」について、どのように考えているかということが透けて見える。以下は、その要約(新聞名の横のカッコ内は社説のタイトル)。
●読売「政治の安定で国力を取り戻せ 成長戦略練り直しは原発から」
日本は経済力、防衛力、技術力などの総合力である「国力」を維持・向上させるべき。中国・北朝鮮の脅威に対処するためには、集団的自衛権の行使を容認し、日米同盟の強化が必要。金融緩和・財政出動・成長戦略の3本の矢でデフレ脱却を図ろうとする安倍首相の考えは妥当だ。安全性を確認した原発は、着実に再稼働し、TPPにも参加してルール作りに国益を反映させなければならない。
●朝日「混迷の時代の年頭に 『日本を考える』を考える」
私たちが抱えるうんざりするような問題の数々は、「日本は」と国を主語にして考え、答えが見つかるようなものか。米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授は、これから期待できそうなのは、国家が主権を独占せず、大小の共同体と分け持つ仕組みではないかという。時代はその方向に向かっているように見える。「日本」を主語にした問いが的はずれに感じられるときがあるとすれば、そのためではないか。
●日経「国力を高める 目標設定で『明るい明日』切り開こう」
日本の閉塞状況を打ち破り、国力を高めていくための手がかりをつかまなければならない。戦後は、吉田茂元首相が敷いた軽武装通商国家路線で、経済大国をめざした。一つの提案は、科学技術の力で新産業を育成し、人々の生活を変え、世界の課題解決に貢献する「科学技術イノベーション立国」の勧めである。日米同盟を深化させ、対中懸念を抱く、豪、印、越、比などとの安保協力の枠組み作りも必要だ。
●毎日「2013年を展望する 骨太の互恵精神育てよ」
2013年は戦後の日本の生き方が試される年になる。一つは、日本経済の底力。限られたパイの中で、豊かな高齢者層から雇用も所得も不安定な若年者層への、より明確な所得移転が必要になるのではないか。成熟経済対応にギアチェンジする時である。二つ目は、日本政治の平和力。中国に対し、強硬路線の悪循環を排し、現状維持の緊張に耐え抜くこと。対話と妥協の機をうかがい、話し合いのテーブルにつく。
●産経「年のはじめに 長期安定政権で国難打破を」
新年を日本再生の元年にしたい。憲法改正を掲げる政治勢力が国政の担い手となり、国のありようを正す動きが顕在化してきた。東アジアの安全保障環境は、中朝と日米韓が厳しく対峙する構図。ロシアも微妙に絡む。日本人が覚悟を決める時だ。日米同盟を堅固にして抑止力を強める。そして心を一つにして中国の圧力をはね返す。安定した長期政権になってこそ、国難に立ち向かって国益を実現できる。
●東京「人間中心主義を貫く 年のはじめに考える」
脱原発への決断は、再生可能エネルギーへの大規模投資と大量雇用を見込めます。医療や福祉は国民が求めています。今回の大震災は、自然を制御、征服する西欧の近代思想の限界を示しました。近代文明を考え直す。そこに人間中心主義が連なっています。日中戦争当時、時流におもねらなかった石橋湛山の非武装、非侵略の精神は日本国憲法九条の戦争放棄に引き継がれました。簡単には変えられません。
以上、各紙とも、日本と中国が緊張状態にあることを念頭に、国防や経済問題などを論じている。大きく分けると、保守的な読売、日経、産経が、国民国家を守るために何が必要かを論じ、左翼・革新的な朝日、毎日、東京が、国家のエゴが危機を招く、といった論調だ。
「保守」とは、家庭や社会、国家に対して責任を感じる立場であり、もちろん本誌・本欄は保守の立場である。一方、左翼系の言論には、「平和」「非武装」など耳触りがいいものも多いが、実は、国民国家を守れない、非常に危険で無責任な言論であるという事実をおさえておきたい。「平和」や「非武装」を訴えるなら、中国や北朝鮮に向かって言うべきではないか。(格)
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2012年10月2日収録 大川隆法総裁 公開霊言抜粋レポート
『国防アイアンマン対決』―自民党幹事長石破茂守護霊vs.幸福実現党出版局長矢内筆勝