観光庁が、国際会議の誘致計画に本腰を入れて取り組み始めている。オリンピックの誘致と同様、開催に伴って大規模な経済効果が見込まれる上、開催都市の国際的PRにつながると期待されるためだ。
観光庁が指標とするICCA(国際会議協会)の統計によれば、2011年の国際会議開催件数が、日本は世界第13位であり、アジアでは中国に次いで第2位となっている。国際会議の開催地はアメリカやヨーロッパ圏からアジアに移行する傾向があるが、積極的に誘致活動を行っている中国や韓国がそのシェアを高めている。
中国・韓国では、誘致のために大規模な会議場や展示場の新設を進めている。日本で最大規模の会議場は収容人数が5000人規模だが、シンガポールや韓国の収容人数はそれを上回る。また、展示場の面積も、日本最大規模の展示場と比べ、中国最大のものは4倍以上もある。
観光庁は、熾烈な国際競争に対抗するため、海外での市場調査をするほか、日本各地にある大規模な会議場の稼働率を上げる試みも行っている。バブル期以降、地方に多数大規模な会議場が建設されたが、その稼働率は低い。外国へのアピールや紹介を進めることで、今ある施設を活用し、地方の活性化にもつなげたい意向だ。
ただ、日本に国際会議を誘致するにあたっては、インフラや環境の整備だけでは不十分だ。今月15日から17日に福島県で原子力安全会議が開催されたが、日本からの出席者・発言が少なく「議論の中身では日本の埋没感は明らかだった」と評されている(17日付の日経新聞電子版)。開催国となるからには、世界に対しての責任を持ち、自国の意見を発信することが必要だろう。
オバマ大統領下のアメリカが世界的影響力を低下させつつあり、軍事独裁国家・中国が世界のリーダーの座を奪おうとする中で、日本が国際社会で果たすべき役割は大きくなるばかりだ。
日本は国際会議の誘致を増やし、中国への「抑止力」を強めるとともに、単なる「場所貸し」に終わらせず、世界のリーダー国としての責任を果たす立場であると自覚すべきだ。 (晴)
【参考記事】
2012年12月11日付本欄 中国の虚構を打ち破る最強の対外広報戦略とは ―今こそ日本は世界の世論を味方につけよ―
http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5270
2012年5月24日付本欄 2020年東京五輪で"ニッポン復活"を世界に示せ