中国政府が、邪教と認定している国内のキリスト教系新興教団「全能神」のメンバー千人以上を反政府運動の一環として摘発したと、20日付中国紙「新京報」が伝えている。マヤ暦がらみの布教活動が社会秩序を乱したためとされているが、11月に発足した習近平体制による反政府的な宗教への見せしめの意味があるとも思われる。英ガーディアン紙も「こうした集団を容赦なく罰するとのメッセージだ」としている。

「全能神」はキリストの生まれ変わりとする若い東洋人女性を崇拝し、中国共産党を意味する「大きな赤い龍」を倒して全能神が統治する国家を建設しようと主張。最近はマヤ暦に基づいた今年12月21日を世界の終わりであると各地で流布し、入信すれば救われるとの宣伝文句で信者を急速に増やしたという。中国国営中央テレビ(CCTV)は「全能神」を、「世界の終わりが来るというデマを流して社会秩序を乱し、政府に敵対するよう信者を扇動する邪教集団」「信者をだまして金銭や財産を巻き上げている」としている。

こうした "邪教認定"が妥当かどうかは分からないが、圧制や専制によって多くの人々が苦しみ、国外脱出を願うような状況にあっては、宗教者が反社会的・反国家的な抵抗運動を行うことには一定の正当性がある。歴史的にも、中国では宗教による世直し革命が繰り返し起きてきた。古くは2世紀の後漢末期に起きて三国時代を導いた黄巾の乱に始まり、14世紀の元朝末期における紅巾の乱、清朝における1850年の太平天国の乱や1900年の義和団の乱などがある。最近では気功学習集団・法輪功も中国政府の弾圧を受けている。

19日付産経新聞は、中国では貧富の格差拡大や将来への不安などから貧困層を中心に宗教を信仰する人々が増えており、伝統宗教は政府の管理下に置かれているので、非合法の新興宗教が数多く誕生しているとしている。「全能神」が終末論を強調し恐怖心で伝道する度が過ぎているなら、確かに邪教性は高いが、たとえそうであっても、明らかに反社会的な暴力事件や破壊活動(オウムのような)をしているのでない限り、教義の流布と伝道活動は信教の自由として保障されるべきだろう。政府批判の自由を含む信教の自由を認めない国家は神の正義から見て許されないことを、中国政府は悟らねばならない。(徳)

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