12月19日に行われる韓国大統領選に立候補の予定だった、安哲秀(アンチョルス)元ソウル大学教授は23日、出馬取り止めを表明した。有力三候補の三つ巴の戦いになっていた大統領選では、野党候補の一本化が模索されていた。安氏の出馬断念で、民主統合党の文在寅(ムンジェイン)氏が野党の統一候補として、与党・セヌリ党の朴槿恵(パクグンヘ)候補に挑むという構図になる。
これまでの世論調査では朴氏が圧倒的に有利だったが、野党候補が一本化されたことで、接戦になる可能性がある。また、親北反日の外交政策を進めた盧武鉉政権で、大統領秘書室長などを務めた文氏が野党の統一候補となったことで、選挙戦は右対左という路線対立が鮮明になる。
とはいえ、韓国世論が左傾化する中で、北とは平和を実現し、日本には「正しい歴史認識」を迫るという流れが強まっている。与党の朴候補はこのほど米紙に寄稿し、北朝鮮の核問題の解決が北東アジアの平和に不可欠としながらも、日中韓で「正しい歴史認識」を持たなければならないとし、日本に対して歴史問題を解決するよう求めている。また、日韓はアメリカの同盟国だが、中国とも協力すべきパートナーであり、「どちらかを選ばなければならないという種類の話ではない」と論じている。
保守派とされる朴氏でさえ、周辺地域を呑みこもうとする中国の覇権主義や北朝鮮の脅威に対する認識は甘く、日韓が国防問題で連携すべきという意識は希薄であると言える。
北朝鮮では、ミサイル発射基地に貨物が運び込まれるなど、発射実験が近いことを思わせる兆候が出ている。このままでは韓国が北朝鮮から核ミサイルで脅されるようになる日は近いが、各候補は福祉のバラマキを競っている。また、安倍晋三・自民党総裁の再登板など「極右」政治家の登場で日本が「軍国主義化」しているという議論が多く、韓国にとって最大の国防問題であるはずの北朝鮮問題が、不必要にかすんでしまっている。
保守派の朴氏が勝つ方が韓国の安全保障上好ましいのは言うまでもないが、このままでは誰が勝っても、独裁軍事国家の北朝鮮が半島を呑みこむ危険が高まるだろう。北朝鮮は最大の軍事的脅威であり、民主主義などの価値観を共有する日本は、それに対抗するための安全保障上の味方であるという当たり前の判断さえつかないなら、韓国は間もなく滅びの門をくぐることになる。
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