民主党の鳩山由紀夫元首相が総選挙への立候補を断念した。鳩山氏は民主党の方針である「消費税増税」や「TPP推進」に反対しており、自らの理念と反するがために引退を表明したという。
鳩山氏は2009年9月に政権交代を成し遂げ、「本当の国民主権の実現」「内容の伴った地域主権」を内閣の二本柱として方針を固め、キャッチフレーズは「脱官僚依存」だった。一時期、国民とマスコミの脚光を集めたが、発言は一国の首相とは思えないものばかりが続き、化けの皮はすぐに剥がれた。
鳩山氏の首相失格の無節操さを象徴したのが、米軍普天間基地移設問題だ。
初めは「最低でも県外、できれば国外の移動を目指す」と沖縄での期待を盛り上げたものの、鳩山氏はオバマ大統領に「Trust me」(私を信じてほしい)と発言。日米合意の辺野古移設に期待する米国側は不信を抱き、結局何も解決せず、県外は頓挫。あげくの果てに「沖縄に存在する米軍によって抑止力が維持できると学んだ」と発言した後に辞任。その後も矛盾した発言や無責任な発言を繰り返している。
なぜここまで無責任な首相が出てきてしまったのだろうか。自民党に圧勝し、あそこまで民主党が脚光を浴びたのは、朝日新聞を中心とするマスコミの「政権交代」の大合唱があったからだ。
2009年の朝日社説の中には明らかに政権交代を後押しする言葉があふれていた。例えば、「いまの政治の閉塞状態を打破するために、自らの一票で意思表示したい」(7月7日付社説)「自らの一票で政治の閉塞状況を変えたい。そんな有権者の思いが広がっているのは間違いない」(7月13日付社説)などである(詳しくは下記関連記事)。
また、NHKは「有権者がどう判断し一票を行使するのか。歴史的な政権選択選挙になるかどうかは、そこにかかっています」(8月18日放送のニュース解説「時論公論」)と放送している。マスコミに煽られて首相候補になり、はたまた政権交代まで実現してしまう。マスコミ権力が国民を振り回し続けたというのが、この3年の結末である。
3年にも及んだ民主党は国益を無視した売国政府であり、国難を招いた罪は重い。東京都知事選や衆院選が近づいているが、石原慎太郎氏や橋下徹氏が率いる日本維新の会などポピュリズム政党にマスコミがスポットを当て、またしても民主党的な政治が再来することのないよう、有権者の良識が問われるところだ。(徳)
【関連記事】
2009年8月号記事 鳩山由紀夫「亡国のプリンス」
http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=650
2011年8月号記事 民主党政権をつくったマスコミの責任を問う「国難」は09年衆院選の報道から始まった