「再生医療 危うい倫理」と 11日付東京新聞が1面トップで報じた。山中伸弥・京都大学教授のノーベル賞受賞で注目が集まるiPS細胞の応用に対して警鐘を鳴らしている記事だが、「倫理上の問題」を言うのであれば、霊的な観点をもっと知る必要があるだろう。

同紙によれば、すでに人間のiPS細胞を動物の臓器に移植する研究が進んでいる。膵臓ができないようにしたブタの胎児に、人間のiPS細胞を培養した細胞を移植し、ブタで人間の膵臓を作ったり、マウスに人間の肝臓を作る実験などだ。

政府の指針では、動物の受精卵に人間の細胞を移植し、子宮に戻して個体を作り出すことは禁じられているが、人間の細胞や組織を動物へ移植することは認められている。そのルールの範囲内で様々な研究が行われている。

だが東京新聞では、「技術が進めば、脳細胞の動物への移植などにも応用でき、やっていいことといけないことを、どのように線引きするのかという問題に直面する」と、倫理上の問題を指摘している。

しかし、その答えの一つを、すでに本誌では2004年9月号に掲載している。人間とよく似た生理機能を持つブタの遺伝子を組み換えた心臓を、サルに移植する実験も成功していることを取り上げ、脳死臓器移植に代わる医療の一つとして期待できると報じた。

いずれは、iPS細胞をもとにブタなど動物の体内に人間の臓器を作り出し、心臓や肝臓などの障害・病気を持つ人に移植することも可能となるだろうが、霊的観点から見ても、これは許容範囲と言える。

「倫理上の問題」を言うのならば、むしろ脳死臓器移植の方が問題だろう。霊的に見れば、脳死状態は人の「死」ではなく、まだ肉体から霊体(魂)が離れていない状態であり、この状態で臓器を取り出せば、霊体も傷つき、あの世への旅立ちが妨げられてしまう。

それに対してiPS細胞による臓器移植は、自分の細胞から臓器や組織を作り出せるため、人の死を待つ必要も、構造的なドナー不足もない。また拒絶反応もないという、「夢の医療」と言える。やはり、医学や科学に霊的観点を入れねば、真に「倫理的」かどうかは分からないのだ。(仁)

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2004年9月号記事 「移植」に代わる先端医療を追う――人工臓器と再生医療

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2008年5月号記事 新型「万能細胞」実用化で夢の医療実現を

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2012年10月9日付本欄 山中教授がノーベル賞を受賞 世紀の発見の背後には神の存在が

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