iPS細胞(人工多能性幹細胞)を開発した京都大学の山中伸弥教授が8日、2012年のノーベル医学・生理学賞を受賞した。日本人として19人目のノーベル賞受賞に、日本全国で喜びの声が上がっている。
iPS細胞は、神経や肝臓、心臓など、多様な細胞に成長する能力を持つ万能細胞の一種。これまで臓器移植でしか助からなかった病気や、治療法が解明されていない難病の治療に役立つと考えられている。万能細胞にはES細胞もあるが、こちらは受精卵を壊して使うことから、倫理的な問題の懸念がある。これに対してiPS細胞は、皮膚細胞から作れる上、自分の細胞を使えるので拒絶反応の心配も少ない。
山中教授は8日、受賞後の会見で「日本という国、日の丸の支援がなければ、こんなに素晴らしい賞を受賞することはできなかった。日本という国が受賞した賞だと感じています。一言で言えば感謝の言葉しかない」と謙虚に語っている。そして「安全性の課題を克服し、患者の役に立ちたい」と、実用化へ向けた次なる研究の抱負を述べた。
「人の役に立ちたい」という思いと、研究への情熱、教育への情熱で、多くの研究者や学生、患者から慕われている山中教授。2011年の著書『「大発見」の思考法』(益川敏英氏との共著;文春新書)の中では、「これは神様にしかできない、と思うことがたくさんある」「苦しい時の神頼みはよくします」と語っている。同教授は特定の宗教は信じていないというが、「神」と呼ばれる大いなる存在自体は信じているのだろう。
かつてノーベル賞を受賞した日本人科学者の中には、「神を信じれば、科学的探究を放棄することになる」と公言し、無神論・唯物論を表明している人もいる。しかし、一流の科学者になればなるほど、研究を通して生命や自然の仕組みの中に、人智を超えた神の存在や意志を見出すともいう。
神の存在を認めることと科学的に真理を探究することは、山中教授のなかで何ら矛盾していないということが、上記の著書の言葉と研究業績からよく分かる。苦しむ患者を救いたいという愛の心と真摯な研究姿勢に神も味方し、世紀の発見と今回の受賞につながったように思えてならない。(晴)
【関連記事】
2012年8月2日付本欄 iPS細胞を用いてALS新薬の可能性が
http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4668
2010年10月号記事 人体再生神話に挑む
http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=55
2008年5月号記事 気になるニュースが「わかる」ページ 脳死臓器移植の三つの問題点