絶滅の恐れがある野生生物の「レッドリスト」に、ニホンウナギが絶滅危惧種として追加される見通しだ。「レッドリスト」自体に強制力はないため、当面、漁業への影響はないが、絶滅の危機にあることを公式に認めることで、希少生物の国際取引を制限するワシントン条約の対象になる可能性が高まりそうだ。

中国や日本への輸出のため乱獲されたヨーロッパウナギは、3年前に条約で規制が始まっている。アメリカはニホンウナギも条約に追加する提案を検討中で、そうなると、中国などからの養殖ウナギの輸入が制限され、ウナギの値段が高騰するとみられる。

ウナギが食べられなくなる日が来るのだろうか。今年、ウナギは庶民にとっては高価だった。今年3月末までのウナギの稚魚の漁獲高は12トンと、去年や一昨年の19トン、17トンに比べ、激減している。そのため稚魚の価格が去年に比べ2倍以上になり、ウナギの値上がりにつながっているという。

一方、稚魚の値段の高騰に対抗できる、新しい養殖技術が開発されてきている。岡山理科大学の山本俊政准教授は、真水に数種の必須ミネラルをごく微量溶かし込んだ「好適環境水」により、ほとんど塩を使わずに海水魚を養殖する研究をしており、ウナギの稚魚からの養殖の研究も行っている。

通常ウナギの養殖はハウスで行われ、地下水を用い、30度の水温を保つため大量の重油を消費する。これに対し、山本准教授の方法は、特殊なろ過装置を用いて水を換えずに育てるため、重油代をはるかに低く押さえられる。そのため、稚魚の値段が上がった分を吸収できるほど、養殖にかかる費用を下げられるという。

ニホンウナギの絶滅危惧種指定で、ウナギの安定供給ができるだけではなく、養殖費用も低く抑えることができる「山の魚工場」に、さらなる期待がかかる。(居)

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2009年3月号記事 世界を救う日本の知力

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