海上保安庁法改正案が29日の参院本会議で可決、成立した。これまで「海上」でしか逮捕する警察権がなかった海上保安官が、今後は、離島の「陸上」でも逮捕できるようになった。
野田首相は24日の時点で、尖閣周辺の警備体制を強化する考えを示し「海上保安庁の装備や人員の増強を図っていく」と述べた。また、海保は監視能力を高めた巡視船4隻を、早ければ2015年から順次配備する予定だ。(29日付日経新聞)
こうした対応によって、尖閣諸島への不法上陸や、中国漁船の領海内での違法操業などに対する日本側の対処が迅速になることが期待できる。
だが問題は、尖閣などの離島に他国の武装した民兵や軍隊そのものが上陸するような事態について、日本政府は想定していないことである。この点について、29日付読売新聞で、元海将の香田洋二氏が、中国が採り得る尖閣への軍事的手段として、「特殊部隊による奇襲上陸と占拠」を挙げている。
その想定される行動は、潜水艦からの水中移動による隠密上陸や、ヘリなどを使って空から上陸して、尖閣諸島を奪う。そして、中国軍特殊部隊が五星紅旗を山頂に立てた様子を衛星通信で北京に中継。「人民解放軍勇士の決死的作戦による、尖閣諸島の主権と実効支配の回復」とニュースで宣言し、世界中に配信。その状況を維持するというものだ。
日本の対応が遅れれば、自衛隊が想定している防衛出動や日米安保条約を発動させる機会を失う。そもそも、このような事態を抑止する警備体制は現在とられていないのだ。
海保法改正は評価できるとしても、中国がこれまでフィリピンやベトナムなどで行ってきた「一方的な領土宣言」および「軍事力による実効支配」を抑止する効果は到底期待できない。
野田政権は、尖閣に上陸した14人の活動家を強制送還して中国側に配慮したが、中国が次の一手を打つ前に日本が先手を打たなければ、中国の態度はどんどんエスカレートしていくだろう。(居)
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2012年8月27日付本欄 富士火力演習は尖閣防衛を想定 離島防衛へ予算増は不可欠
http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4796
2012年9月号記事 U.S. Marine Corps. - 米海兵隊