EU(欧州連合)の採択した、ITを使って上水道システムを効率運用する実証実験に、東芝が参加することが決まった。EUは、漏水や消費電力を低減させることで、管理・運用コストの2割削減を目指している。24日付日経新聞が報じた。

実証実験では100世帯超の家庭・企業に通信機能を持つ次世代水道計を設置。総延長約1キロメートルの水道管にセンサーを多数据えつけ、各機器をネットワークでつないで水道の使用量や漏水状況を瞬時に把握できるようにする。東芝はその中の、通信インフラの構築を担当し、障害の検出・復旧やシステム管理を含めて担い、商用化への課題を報告するという。経済効果が実証されれば、EUの標準規格につながる見通し。経済産業省の予測では世界における上水道の市場規模は、2025年には07年比で2倍以上の約40兆円に成長するという。

EU域内では水のくみ上げに電力消費量の3%を使っているが、水道設備の老朽化が進み、漏水で約2割が失われる。ヨーロッパで水道水を飲まない理由は、日本とヨーロッパでは水の硬度が違い、日本は軟水だがヨーロッパは硬水だからとよく言われる。だが実際は、漏水による汚水混入で不衛生だから飲めないとの指摘もある。評論家の日下公人氏は、本誌取材に対しこう答えている。「ヨーロッパの都市の水道の漏水率は20%から40%。これは、チフスなどの菌が入る危険性が高いことを意味します。それに比べて、東京都の漏水率はたったの3%」。

ヨーロッパでは水道水が飲めないので、食事では代わりにミネラルウォーターやワインを飲むことも多い。水道水が普通に飲めるようになれば、昼間からワインを飲む人が減り、午後の仕事の生産性が上がって経済も上向くことがないとも限らない。

日本は、世界の国々に提供できる優れた技術がたくさんある。生活の基本である飲料水に関する技術もその一つであり、今後の有望な輸出産業だ。(居)

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