オバマ米大統領は20日、内戦状態が続くシリアについて、アサド大統領側が化学兵器の移動や使用を行えば、「越えてはならない一線」を越えたことになると警告した。発言は、シリアに対する武力介入もありえると、オバマ氏が示唆したものと見られている。

昨年3月からのシリアでの反政府派によるデモは、政府側の武力弾圧とそれに対する反撃によって内戦に発展した。シリアに対しては国連安保理による制裁決議がこれまでにも検討されてきたが、現政府と友好関係にあるロシアや中国の反対でとん挫していた。

アサド政権による反体制派の弾圧を国際社会は止められず、これまでに2万人以上が死亡し、17万人の難民が周辺国に流出している。

安全保障理事会は「国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任」を負っているが、アサド政府軍による虐殺を容認しているロシアや中国の姿勢は、この精神に反しているといえる。シリアの問題では、安保理が大国間のパワーゲームを制度化したものに過ぎないという、国連の制度的欠陥も明らかにするものとなった。その結果が、国際社会がシリアでの内戦を1年半にわたって放置するという異常事態である。

シリアで起きている事態の大きさを思えば、オバマ氏の発言は遅かったとはいえ、大きな前進ではある。

「大量破壊兵器」の存在を疑い、フセイン政権を倒したイラク戦争の時よりも、今回のシリアの虐殺を止めることのほうが、介入の大義が明確であると言える。アメリカはNATOを中心に参加国を募って、アサド政権による虐殺を早期に止めるべきである。

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