尖閣問題や南シナ海の領土問題で中国の強硬姿勢が際立つ中で、オバマ政権が打ち出した「アジア回帰」路線を応援するような議論が、アメリカで盛んになっている。
米外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」は9月、10月号で、アメリカは西太平洋での軍事的な優位の維持に努めるべきだという趣旨の論文を相次いで掲載した。
プリンストン大学のフリードバーグ教授の論文は、アメリカが中国に強い姿勢を示さなければ、周辺国が中国になびいたり、中国が米軍を西太平洋から追い出そうと戦いを挑んでくる恐れがある、と論じている。同教授は「アメリカは中国の軍拡に対処する信頼に足る戦略を構築し、予算をつけることと、経済の関係でさらに強い姿勢を取ることの、どちらも重要になるだろう」と、中国に対し強い姿勢で臨むことを求めた。
対する、コロンビア大学のナタン教授とランド研究所のスコベル上級研究員が著した論文は、航行の自由や同盟国の安全保障など、アメリカは東アジアの安定について守るべき国益があると論じている。これらを守るために、アメリカは西太平洋での軍事力を維持するとともに、国際法を書き換えるような中国の動きに対して反対を続けるべきだと、両氏は論じている。
「中国脅威論」はアメリカでも盛んに議論されているが、一方で米政府の実際の政策が、これら論文筆者の望むように推移するという保証はない。「アジア回帰」路線を推進したクリントン国務長官は来年1月で退官予定の上、アメリカの財政問題が深刻化していく中で、西太平洋に振り向けるだけの軍事力を確保する予算を長期にわたって組めるかは不透明だ。
日本としては、アメリカの「アジア回帰」を応援し、北朝鮮や中国に対する日米一体となった抑止力強化に努め、地域の安定に貢献することが第一だ。しかし、万一アメリカがアジアから引き揚げていくリスクも考慮して、自国の国防体制を考える必要がある。
いずれにせよ、日本は防衛体制を強化していかざるをえない。オスプレイ反対運動などは、日本の国防を危機にさらす可能性が高い。
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