ロシアの宇宙開発で失敗が続いている。日本にとっても教訓となる事例だ。
21日付産経新聞によると、ロシア宇宙庁は7日、通信衛星2基を搭載したプロトンM型ロケットを打ち上げたが、推進装置が起動せず、打ち上げは失敗に終わった。ロシアでは、ここ1年半で軌道上に載せられなかった衛星が10基となり、打ち上げ失敗が続いたため、今後の受注計画の進捗が危ぶまれている。
今回の失敗の原因については、ソ連崩壊後の財政難による投資の不足と分析されている。
開発費用や設備の更新が停滞しており、老朽化の激しい設備は20年以上使われ続けている。さらには、90年代から海外に優秀な人材が流出し続けたため、専門家が不足しており、次世代の育成もままならない。メドベージェフ首相は14日、巻き返しを図るため、2015年までに1.6兆円の予算を拠出すると発表している。
ひるがえって、日本ではロケットの打ち上げ成功が続いているが、将来的にロシアと同じような問題に見舞われる危険性がある。
17日に示された内閣府宇宙戦略室の方針では、「はやぶさ2」の予算計上について明確な方針が示されなかった。打ち上げに必要な費用は約300億円のうち、今までに計上された予算はその2割の60億円に留まっている。他にも、国際宇宙ステーションへの予算は2016年度以降削減される予定。全体的に宇宙開発全体への投資は緊縮の方向にある。(参考:21日付日経新聞)
だが、宇宙開発は、日本の新たな基幹産業として力を入れて発展させるべきだ。
アメリカのGEは70年代に、家電製品から撤退し、ジェット機や医療関係の付加価値の高い分野にシフトした。現在の日本も、お家芸だった家電や自動車の分野で韓国や中国に苦戦を強いられているが、この苦境は、付加価値の高い分野にフロンティアを求めるべきであることを、日本に教えている。
その意味で、日本は、ロシアの宇宙開発の失速事例を教訓にし、国家として宇宙開発に力を入れるべきである。国家未来事業債の発行などによって資金を集め、投資を進める必要がある。その時期が遅れれば遅れるほど、日本が他国を追いかけるときの負担が増していく。国防とも密接に関係する宇宙開発に力を入れることは、日本の繁栄に直結しているのである。(晴)
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2012年8月15日付本欄 中国は「制宙権」の確保を狙っている 中国軍事研究家・平松茂雄氏