日本でも8月から「トガニ」という韓国映画が公開されている。韓国の聴覚障害者学校で6年もの間、子供たちが教員らから性的虐待を受けていた実話をもとに作られている。
18歳未満入場禁止指定を受けた映画で、虐待のすさまじさを真正面から描いている。殴る蹴る、洗濯機に顔を突っ込まれるといった、性的な虐待・暴行を男女問わず受けていた。観客の心を暗くする内容だが、このリアルな描写こそが韓国の世論を動かした。
聴こえず、話せない聴覚障害者への虐待は、「悪魔」の所業を覆い隠し、発覚を遅らせる。
映画を観た李明博大統領は、「意識改革の必要性」を国民に呼びかけ、事件の再調査、実在する学校を廃校にするということまでやった。国会は、子供に対する性暴力犯罪への処罰を強化する法改正「トガニ法」を成立させた。映画は時に世の中を動かす大きな力になる。
学校というのは閉ざされた特殊な空間だ。第三者が入り込めない聖域なので、そこで正しい教育が行われているなら問題はないが、いじめや暴力、恐喝などが起きていたら、子供に逃げ場はない。大津市内のいじめ事件では、いじめを受けている生徒を前に教師が制止するのではなく、ニヤニヤして見ていたといわれている。仙台市内の私立高校で、たばこ火を押し付ける「根性焼き」が行われていたいじめ事件では、教頭らが「いじめとは認められない」として、いじめを受けた生徒に自主退学を求めていた。
生徒を死に追いやるような行為は「いじめ」以上の、警察が介入すべき犯罪だ。善悪を教える場である学校で、教師自ら善悪が分からないことが、いじめを放置し、子供たちを不幸にしている。
本誌でも提言してきた「いじめ防止法」(大川隆法案)は、第三条でこう規定している。
「教員が、いじめ行為に加担、黙認、参加した場合は、厳罰に処す(注 懲戒免職、停職、免許剥奪、減給、戒告など)。学校長、副校長、教頭などが教員のいじめ隠蔽を指揮したり、それに加担した場合は、当該教員より一段と重い厳罰に処す」
この条文は、韓国の聴覚障害者学校の教員たちを罰したのと同様に、悪質ないじめを放置したり助長したりした教員を処罰するとしている。いじめを解決するのは学校の教員、校長であるという共通認識がまずは必要だ。(静)
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2007年3月号記事 教室に正義を! 「いじめ処罰法(防止法)」(大川隆法案)