消費税増税法案が10日、参院を通過し成立した。これによって消費税は2014年4月に8%、2015年10月に10%へと段階的に引き上げられる。法案には景気悪化の際に増税を取りやめることができる「景気条項」を盛り込んだが、あくまで努力目標であり、強制力はない。

増税賛成派は「政府の借金が1000兆円にものぼり、財政破たんの恐れがある」と盛んに喧伝してきたが、日本政府が借金を返せずに首が回らなくなる事態は、まだ訪れそうにない。国債金利は依然として1%を下回る超安全圏にある。むしろ、出口の見えないユーロ危機や、アメリカの財政問題、中国経済の不調を受けて、比較的安全な日本国債に投資家が資金を避難させる状況が続いている。

日本国債の外国人保有率は昨年度末に史上最高の8.3%を記録した。その理由として、8日付のフィナンシャル・タイムズは、「日本には独自の通貨と、独立した金融政策と、比較的強い経済と、十分な対外資産がある」との民間エコノミストのコメントを引用している。その言外には「日本はユーロ圏とは違う」というニュアンスが嗅ぎ取れる。

そもそもギリシャなどが増税を含めた緊縮財政を行っている理由は、期限が迫った借金が払えなくなって、資金繰りがショートしかねない緊急事態にあるからである。すぐにお金をかき集めなければならない非常時ではない日本にとって、増税は必ずしも正しい政策とは言えない。

資本主義の原則は「誰かの使ったお金は、誰かの給料になる」ということである。不況期の増税で国民の財布の紐をこれ以上固くすれば、経済は委縮し、日本はどんどん貧しくなってゆく。

本誌が再三再四にわたって指摘してきた通り、目指すべきは経済成長であり、それでこそ安定した税収に支えられて、政府が借金を返す余裕も生まれてくる。政治生命をかけて増税を実現させた野田首相の次に来る新政権には、増税の速やかな撤回を強く求める。

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