モニター画面を食い入るように見つめていた人たちが、一斉に跳び上がり、歓声を上げる。オリンピックではない。米東部時間6日午前1時半、探査車が無事に火星に着陸した瞬間の、NASAの管制室の様子である。

今回着陸した火星探査車「キュリオシティ」は、NASAがこれまでおよそ25億ドルを費やして8年にわたり開発してきた。測定装置などを10個装備しており、今後2年間の調査で、火星が生命維持にふさわしい環境なのかを探ることになる。

オバマ大統領は、「2030年代半ばまでに有人火星探査を実現する」という野心的なゴールを掲げており、今回の探査車の着陸成功は、それに向けた一歩になる。その一方で、財政問題の深刻化を受けてNASAの予算は削減傾向にあり、概算要求の段階にある2013年度予算で、オバマ政権は惑星探査予算の20%削減を打ち出している。

とはいえ、世界経済の減速が懸念される中にあっても、各国は火星探査プロジェクトを着々と進めている。欧州宇宙機構(ESA)は2016年にも宇宙船を火星に送る予定で、2018年からの探査開始を目指している。ロシアも採掘機の開発などを通じて、このプロジェクトに関わるとみられる。インドも小型の人工衛星を来年にも火星に送る計画を進めている。

宇宙開発は成果がすぐに出ないため、特に不況期には「お金の無駄」という話になりやすい。しかし、安定した経済発展を維持するための足腰ともいえる科学技術力には、長期的な視野に立った投資がぜひとも必要である。「科学技術立国」として力強く経済を復活させるためにも、技術力の結集である宇宙開発に、日本はもっと積極的に踏み込み、ビジョンを示すべきである。

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2011年12月13日付本欄 火星は「広範囲」で生命が生存可能、地下生活がメイン?

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2011年10月号記事 火星に「水」発見、生命体の発見まで秒読み段階か? "Newsダイジェスト"

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