体外受精による受精卵を子宮に戻す前にすべての染色体を調べ、異常を見つけることができる新型の「着床前診断」が、神戸市の産婦人科医院で不妊患者対象に行われ、これまでに16人が出産したことが先ごろ報道された。

加えて、タイに渡航して、着床前診断を使って男女の産み分けをしていた夫婦が2012年に少なくとも90組いたと読売新聞が今週報じた。男女産み分けは日本では原則認められていない。

旧来の着床前診断では23対ある染色体の一部しか調べられなかったが、新型だと全ての染色体を調べることができ、ほぼ確実に異常を見つけることができる。

着床前診断は異常の見つかった受精卵を除くため、命の選別につながるとの指摘が以前から出ている。日本婦人科学会は指針で、重い遺伝病の患者などを除いて認めていない。また、染色体に異常がある受精卵を除外するため、ダウン症などで生まれる可能性のある命をも消してしまうことになるため、障害者団体は強く反対している。

日本では着床前診断は厳しく制限されているが、妊娠中に胎児の染色体異常の有無を調べる「出生前診断」は広く行われている。2009年までの10年間に胎児の異常を診断された後、人工妊娠中絶したと推定されるケースは約1700件あり、それ以前の10年に比べて倍増しているという。出生前診断で異常が見つかり、中絶をしたと考えられる。

生まれてくる子が五体健康であることを願うのは親として自然な気持ちだが、出生前診断にしても着床前診断にしても、障害児を生まれさせないことにつながっているのは事実だ。

いつの時代にも肉体に障害を持っている人たちは存在する。その人たちがいることによって、他の人は健康であることのありがたさを悟らされたり、障害を持つ人を世話する「菩薩行」に打ち込むこともできる。

大川隆法・幸福の科学総裁は著書『心と体のほんとうの関係』で、こう説いている。

「豊かな社会のなかにあって、そういう恵まれない人たちは、他の人々が間違わないように、道を外さないように、心の間違いを教えてくれています。不自由な人や恵まれない人は、困っているところを見せることによって、実は他の人を導いてくれているのです」

重い障害者というのは、驕った人たちを戒め、目覚めさせるための「先生」というのが霊的真実だ。この観点から見た場合、着床前診断や出生前診断については、まったく違う見方が出てくることになる。(静)

【参考書籍】

幸福の科学出版ホームページ 『心と体のほんとうの関係』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=124