北極海の資源利権・領有権をめぐる覇権闘争が起きようとしている。14日付毎日新聞やMSN産経ニュースなど複数の新聞が報じているが、中国、ロシアの動きを見ると、日本政府の対応が非常に重要となる。
まずは、シーレーンをめぐるものだ。
北極海では海氷が解け、航行が可能になりつつある。これにより、2つの新航路が可能となる。北極海航路は、アジアとヨーロッパを結ぶ最短航路で、従来のマラッカ海峡・スエズ運河経由より約7000km短縮される。北西航路は、東京-ニューヨーク間の航路の場合、従来のパナマ運河経由より約4200km短縮される。経済的負担も少なくなるため、新航路での貨物輸送量が大幅に増える見通しだ。
さらには、海底資源の争奪戦の可能性もある。
北極海には、石油だけでも900兆ドル(約7京円)に相当する、大量の海底資源が埋蔵されている。米国の科学誌「サイエンス」によると、地球上で未発見のガスの30%、石油の13%が眠っているという。北極海での資源開発は、北極評議会加盟国を中心に、各国が資源利権を主張している。
以前から、「北極海のロシア化」は指摘されてはいた。北極海は冷戦期から軍事的要衝であるため、ロシアは北極海重視での軍事戦略をとっており、カナダなどの国がロシアを警戒している。
しかし最近では、中国が北極海でのシーレーン確保と資源獲得に乗り出し始めている。中国は自ら「北極に近い国」と称するようになり、北極評議会にオブザーバー申請も出している。中国は実際に北極海での海洋調査も行っており、南シナ海や東シナ海をめぐる領有権主張と同様のことを北極海にもしようとしている。
日本にとっても、北極海での出来事は他人事ではない。
北極海の航行が可能になり、中国などがベーリング海峡を通って北極海を頻繁に航行するようになると、日本列島は新航路と近接する。特に、現在ロシアと領有権を争っている、北方領土の重要性が増すだろう。ロシアのプーチン大統領は、北方領土について「最終決着させたい」と表明しており、北方領土問題に急激な進展が見られる可能性もある。
中国が近海において侵略的な領有権主張を繰り返していることを見ても、日本はロシアを敵ではなく味方につけ、「中国包囲網」を作るべきだろう。日本政府に気概のある外交を貫いてほしいところだ。(飯)
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2010年11月号記事 【201X年日本再占領!?】(4)肥大化する中国に日本スピリットで立ち向かえ
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2011年1月30日付本欄 「北極海のロシア化」着々と進む