現在の中国の体制では、なぜか、良心に従うことが命がけになっているようだ。「盲目の人権活動家」として知られる陳光誠氏が24日、米大手メディアのテレビ取材に応じ、複雑な心境を語った。

陳氏は、地方当局の市民に対する不妊手術や中絶の強制を告発。2006年に公安当局に拘束され、自宅軟禁の状況にあったが、約70人の監視の目をくぐって自宅から脱出し、留学するという形で19日に米国に到着した。

取材では、自宅軟禁について「あまり希望もなく、想像を絶するような苦痛だった」「長いあいだ自然を感じることがなかった」「自宅軟禁ではなく違法拘束という言葉をつかってほしい」と表現されるような過酷な状況下にあった。妻と共に、当局の人間に定期的に殴られるなどの実態を少しばかり明かしたが、詳細はあまり話そうとはしなかった。残してきた家族や友人、支持者の安全を強く心配しているという。

陳氏は、当局の行為の告発について「ごく自然な心情からだった」「悪を押しとどめ、善を押し進めたい(to want to stop evil and embrace the good)と願うのは人間として当然のことだ」「後悔はしていない」と語る。

同日、米国で2011年の世界約200カ国の人権状況に関する報告書が発表されたが、中国における人権活動家や弁護士に対する抑圧や政治的弾圧が日常化し、悪化を続けているという状況が記されている。法的手続きのない死刑や拷問なども横行しているという。

陳氏は良心の呵責に耐えられなくなり、「後悔」することをむしろ恐れ、危険を冒して告発行為に及んだのであろう。しかし、ほとんどの国民は恐怖により、自分の良心を押し殺さざるをえない状況にある。これは、仮に当局に逆らわず、暴行などが加えられることがなかったとしても、良心を自ら殺してしまう、人間性を蝕む最悪の体制であり、人間の幸福に対して「盲目の政治」を行っている。

6月2日から全国公開される、映画「ファイナル・ジャッジメント」では主人公たちは共産主義国の占領下にある日本において、命の危険を顧みずに正義や真理を求める姿が描かれている。こうした事実はフィクションではなく、隣国において現在進行形で起こっていることなのである。

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独裁国家に日本が占領される姿を描いた 近未来予言映画「ファイナル・ジャッジメント」の特集ページ(本サイト内)

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2012年7月号記事 映画「ファイナル・ジャッジメント」が描く日本の危機

日本の中国化、中国の日本化、どちらが先か 日下公人

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4308

2012年5月20日付本欄 盲目の人権活動家 陳光誠氏、アメリカへ出国

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4302