農林水産省が2010年中の農作業死亡事故状況を発表している。全国の死亡者は、398人。前年から10人減ってはいるが、過去10年、400人前後で高止まりの状態が続いている。これをどうにかして交通事故死者のように減少に持っていけないものだろうか。

それには、まず死者数が高止まっている原因を探ってみる必要がある。10年の発生では、農機事故が7割と過去最多となったことと、年齢別の内訳で70~79歳が40%(159人)、80歳以上が34%(134人)と、70歳以上が7割超を占めていることがある。

つまり、農作業事故の背景には、深刻な就農人口の高齢化の問題がある。「事故の減少=農業の若返り」をグラフに描けるような農政を考えなくてはならない。

若者にとって魅力ある農業とは何か。それは、従来の重労働を伴わない軽作業の農業であり、危険な農機操作を必要としない安全な農業であり、そして、何より収益率の高い儲かる農業である。

農業の近代産業化の芽はすでにある。その1つが、最近一部で普及し始めている完全閉鎖型の葉物野菜工場だ。発光ダイオード(LED)などの人工光を用い、照度、湿温度などを自動制御で管理して野菜類を栽培する水耕栽培がそれである。

この野菜工場の利点は、露地栽培と比べて極めて効率的な短い周期での通年栽培が可能であり、栄養価が高く無農薬で安心な野菜を、天候や気象条件に左右されることなく確実な出荷量が見込める点である。

野田佳彦首相はTPP参加に当たって「国内農業を断固守り抜く」と明言したが、この野菜工場の普及を政府として強力に進めることが、公約を果たす大きな力となるだろう。

すでに東北の復興事業の一つとして、今月4日、日本GEと株式会社みらいが、宮城県多賀城市の「みやぎ復興パーク」内に植物工場の実証実験をこの夏から始めることを発表し、各マスコミが報じた。

みらいの嶋村茂治社長は、本誌にも登場した植物工場のパイオニア。高校時代に『新ビジネス革命』(大川隆法著・1988年刊・絶版)を読み、その中で「畑ではなく、工場で野菜をつくる時代になる」という未来社会の予言を読んで、「決めた! これをかなえよう」と決意し、それから20年以上志を持ち続け、植物工場の夢をかなえた。

嶋村氏をはじめ農業を未来産業に育てようとする人たちの努力によって、若者が数多く農業に参入し、高齢化した農業をまったく新しい魅力的な産業に変えていくことだろう。(憲)

【関連記事】

2011年1月号記事 2031年日本の未来構想(4)100億人を食べさせる!

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=329

2012年2月号記事 幸・不幸を分ける「心の法則」Part2

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=3573