2012年5月号記事

日本は第二のチベットになる

『最終目標は天皇の処刑 中国「日本解放工作」の恐るべき全貌』著者

桐蔭横浜大学大学院教授

ペマ・ギャルポ

(ペマ・ギャルポ) 1953年チベット・カム地方生まれ。59年インドに亡命し、65年に来日。80年ダライ・ラマ法王アジア・太平洋地区担当初代代表などを経て、現職。ブータン王国政府首相顧問なども務める。著書に『最終目標は天皇の処刑 中国「日本解放工作」の恐るべき全貌』(飛鳥新社)などがある。

中国共産党がつくったと言われる「日本解放工作」については、昔からその真偽が問われてきました。しかし、それについて書いた私の著書の発売後、出版社に、ある中国人から「内容が間違っている」と抗議の電話がありました。その人は、いろいろ指摘した後、最後に、「日本解放工作が指す『天皇』とは昭和天皇のことで、今の天皇ではない!」と言ったそうです。

つまり、中国人自ら、この「解放工作」が、本物であることを認めたわけです(笑)。

検証 中国の「日本解体工作」

内モンゴル、ウイグル、チベット、そして……。(本誌 p.24)

■日本は第二のチベットになる - 中国の「日本解放工作」

・日本は第二のチベットになる-ペマ…ギャルボ教授インタヴュー (本誌 p.28)

・中国の侵略後に起きていること (本誌 p.30)

中国が目指す「天皇の処刑」が民主党政権で近づく

たしかに、 「解放工作」の内容と日本の現状を比べると、中国の日本侵略計画が着々と進んでいるようにしか見えません。この中に出てくる、中国の手先となる日本の政府「民主連合政府」は、まさに今の民主党政権です。

政権交代後の2009年12月、天皇陛下に拝謁する場合、本来1カ月前に申請しなければいけないルールをゴリ押しで破り、中国の習近平・国家副主席を謁見させました。また、民主党の国会議員143人を含む小沢訪中団は北京を訪れ、胡錦濤・国家主席ら中国の要人に会いました。このとき、議員たちがまるでスターに会ったかのようにはしゃいで、握手や記念撮影をしていました。

他にも、岡田克也外相(当時)が天皇陛下のお言葉に注文をつけたり、中井洽・国家公安委員長(当時)が、国会で秋篠宮ご夫妻を野次るなどの流れを見ると、 解放工作の第三期目標「天皇の処刑」へと徐々に近づいているように感じます。

四六時中監視され5人以上集まると逮捕

名前と罪名が書かれたカードを首から下げた僧侶たちを取り締まる武装警察(2011年12月、四川省のチベット自治州)。写真:AFP =時事

私は1950年代に中国の人民解放軍に追われ、2年以上の逃避行の末、祖国を失いました。中国が侵略前のチベットに何をしたかというと、チベット中のお寺に多くの工作員を送り込み、「中国は、欧米の帝国主義からチベットを守ってくれる」「テンダ・アメリカ(宗教の敵、アメリカ)」などと吹き込んで、西側諸国への警戒心を持たせ、人民解放軍が入りやすい環境をつくりました。

そして、59年のラサ蜂起以降、チベット全土を掌握した中国は、「チベット人民を封建社会から解放する」と言って、富裕層、地主、僧侶を含む地域指導者の、いわゆる「上位三階級」の人々を虐殺していったのです。

カム地方でもっとも有名な高僧の一人は、手足に杭を打たれ、腹を切り裂かれました。別の僧侶は、解放軍の兵士に、「奇跡を起こせるなら皆の前で飛んで見せろ」と高い場所から蹴り落とされました。中国は、チベットに共産主義を浸透させるためには、「アヘン」である宗教の撲滅が欠かせないと考えたのです。

現在もチベットの人々は、昼は公安警察、夜は武装警察に四六時中監視され、5人以上集まると「集会」とみなされ、当局の裁量で逮捕されるような日常を送っています。 多くの人を集めてデモ活動をすることが極めて難しい状況の中で、それでもこの現状を国際社会に訴えなければいけないと切羽詰まった人々が、ガソリンをかぶって焼身自殺を図っているのです。

中国はこうした人々について、「頭がおかしかった」「借金に困っていた」とマスコミに報じさせ、嘘をでっち上げて真実を歪曲しています。

国を守るために大事なのは国民の意志

実はこれと似たことを、中国は日本に対してもやっています。先の大戦では、日本だけが全面的に加害者で一方的に中国を侵略し、多くの中国人を殺したという自虐史観を植えつけて、洗脳してきました。日本の政治家は、中国に対して謝罪ばかりしていますが、これは中国による心理戦の大きな成果だと思います。その意味でも、 すでに中国の「トロイの木馬」は日本の中に入っています。

中国の肩を持つ訳ではありませんが、あらゆる手段を使って自国の利益のために動くことは国際社会では当たり前。良くも悪くも一党独裁の中国は、国家の青写真が出来上がっていて、それに向かって着実に一歩一歩進んでいるのです。

日本は、このままでは本当に「第二のチベット」「中国の一自治区」になります。 国を守るためには、憲法改正や国防の強化なども必要ですが、最も大事なのは、やはり「国を守ろう」という国民の意志そのものです。

これが、近未来の日本  の姿となってしまうのか。

内モンゴル、ウイグル、チベット

中国の侵略後に起きていること

チベット寺院の前で監視する武装警察。写真:時事

宗教

僧侶や神父などの宗教指導者は中国政府が選ぶ。寺院や教会には監視員が常駐し、人の出入りや言動を常にチェックする。 お経を唱えることはできるが、その内容を説明してはいけない。チベットでは、ダライ・ラマ法王の写真を持つことは違法。ウイグルでは、イスラム教のラマダーン(断食)の期間中に、わざわざ無料の集団昼食会を強制し、断食する者を取り締まっている。

経済

中国政府や中国企業とつながりの深い企業を優遇する。一方、反体制的な企業や個人、彼らとつながりを持つ人々を村八分にして、 中国政府に従わなければ経済活動ができない状況に追い込む。 旅行するにも政府の許可が必要だが、ほとんど許可が下りない。最近、内モンゴルでは、モンゴル人が公務員や会社員の採用対象とされない。やむなく留学生として日本に来るモンゴル人は、「留学難民」とも呼ばれる。

教育

小学校から大学まで母国語の使用を禁じ、その国の教師を排除する。 共産党が選んだ人物が教壇に立ち、中国語による教育を行う。もちろん、宗教や固有文化の教育は禁止。仮に母国語を学んでも、進学や就職で役に立たないため、若い世代ほど学ばない。このため、両親がチベット人なのに子供はチベット語が話せない家庭や、祖父母と孫の会話を親が通訳する家庭が増えるなど、世代間の断絶も進む。

社会

政府への抗議運動の警戒にあたる武装警察。写真:EPA =時事

自治区に中国人犯罪者などを移住させ、肉体労働に従事させる。逆に、 自治区の民族の独身女性を移住させ、中国人(漢族)の男性と結婚させる。 また自治区に、道路工事などのインフラ整備名目で、退役軍人を主力にした「生産建設兵団」を送り込む。これは事実上の軍隊で、各地域の独立運動などを弾圧する。

マスコミ

新聞社やテレビ・ラジオ局を支配下に置き、報道内容を検閲する。もちろん、中国政府批判は許さない。同時に、 各媒体を徐々に中国語に移行し、中国語が使えなければ情報がとれないようにしていく。 また、外国のジャーナリストを締め出して、その地域の弾圧状況などが国際社会に漏れないようにする。

密告・監視

厳しい弾圧に、泣いて抗議するウイグル人女性たち。写真:EPA =時事

反体制的な発言・行動をした人を見つけたら密告させる。「犯罪人」に仕立て上げられた人は、公開の場で、人々から罵声を浴びせられたり、市中を引き回されたり、処刑されたりする。見物人は罵声を浴びせることを強要され、拒否すれば自分が標的にされる。 夫婦同士、親子同士でも、互いに批判、監視し合うことを強制される。 チベットでは、反体制運動に参加した人物の家族が、その人物の銃殺刑を強制的に見せられた上、銃弾の費用まで支払わされたという。

中国は第二次大戦後、その時々の国際情勢の混乱に乗じて、1947年に内モンゴル(南モンゴル)、55年に新疆ウイグル(東トルキスタン)、65年にチベットを次々と侵略、自治区に編入してきた。

そして、いずれの地域でも、「あなた方の自治を保障する」「宗教や言論などの自由を認める」などと甘い言葉で近づき、ある程度、軍隊や警察の配備が整った時点で、一気に武力で制圧するのが常であった。

中国の「恐怖による支配」

では、中国はそれらの地域で具体的にどのようなことを行ってきたか(上参照)。

まず、指導者層に対して、彼らの権威を貶める形で粛清する。公開処刑などで、人々に恐怖心を植え付け、反抗する気力を失わせる。また、新聞社やテレビ・ラジオ局を支配下に置き、検閲を施す。言論統制をして、中国に都合の悪いものは一切流さない。

そして、恐ろしいのが密告制度である。地域や職場などで定期的に人々に密告を強要し、互いに監視させ合う。密告しないとその人自身が処罰されるため、親子、兄弟、友人知人、同僚など、いつどこで誰から批判されるか人々は疑心暗鬼になっていく。

結局、中国が侵略した地域に行うことは、「恐怖による支配」ということに尽きる。

特に、中国は唯物論・無神論国家のため、宗教を目の敵にする。 「信教の自由」、つまり、「心の中で何を信じるか」についての自由を奪うことは、言論・出版、集会、結社など、あらゆる自由を奪うことにつながる。

日本にこのような未来が訪れるのを避けるためにも、私たちは国際社会と団結して、中国の民主化を促さなければならない。

(次号につづく)

検証 中国の「日本解体工作」

内モンゴル、ウイグル、チベット、そして……。(本誌 p.24)

■日本は第二のチベットになる - 中国の「日本解放工作」

・日本は第二のチベットになる-ペマ…ギャルボ教授インタヴュー (本誌 p.28)

・中国の侵略後に起きていること (本誌 p.30)