特殊な装置から照射したプラズマによって、卵巣がんの細胞だけを選択的に死滅させることに、名古屋大の吉川史隆教授(産婦人科学)らの研究グループが成功。3月15日付の米国科学雑誌「Applied Physics Letter」のオンライン版で公開されている。
20日付産経新聞ネット版などによると、プラズマは通常、電子とイオン分子が乖離して高温を伴った熱平衡状態をつくりだしている。だが、今回、実験で用いられたのは、電子は激しく運動しているがイオンや分子はあまり運動していない、温度が低い状態、すなわち、大気中でも低温でありながら反応性を保持した「大気圧非平衡プラズマ」である。
これを培養したがん細胞に照射したところ、周囲の細胞をほとんど傷つけることなく、がん細胞だけに自死状態に陥る「アポトーシス」が引き起こされることを確認した。約10分間の照射では、がん細胞の7割が死滅する一方、正常な細胞にはほとんど影響がないという結果が得られた。
吉川教授によると、手術、放射線治療、抗がん剤という現在のがんの三大治療のほかに、プラズマを用いた新しい治療法の開発が期待できるという。
プラズマは、おとぎ話で隠者が使う火の魔法になぞらえられてきたが、真の最新科学は、かつて"魔法"であったものを、この世界に解き放つものなのかもしれない。(寺)
【参考記事】
2011年9月23日付本欄 「光速」を超える速度が発見か?