岡田克也副総理が自民党幹部と会談し、大連立を持ちかけたことが報じられている。岡田氏は会談の中で、消費税増税法案と特例公債法案の成立について協力を求め、「どの政権でも両法案の成立は必要だ。政治休戦したほうがいい」と語ったという。
民主党は21日以降、消費税増税法案の閣議決定に向けた最終的な意見集約を行う。小沢一郎元代表らのグループは、「増税の環境が整っていない」として行政改革などを求めているが、消費税増税そのものに反対しているわけではない。
しかし、年金や医療など社会保障のために消費税を増税するという選択は、本当にやっていいことなのだろうか。
今の社会保障制度は、すでに破綻状態にある。
それを2009年のデータをもとに分析してみたい。
厚生労働省のデータによると、社会保障として同年に給付された金額は99兆8507億円で、ざっと100兆円になる。
うち保険医療費が30兆円、年金に51兆円、他の福祉目的に17兆円が支出されている。
それでは、この財源はどうなのか?
収入総額は122兆とある。その内訳は社会保険料として事業者から26兆円、個人の保険料が29兆円。合わせて55兆円が保険収入である。
しかし、これでは半分にも満たない。だから公費として税金が投入される。それが国から29兆円、地方から10兆円で、あわせて39兆円である。
そして積立金から5兆円、資産収入として14兆円、その他が7兆円、計上される。
自然に考えれば、保険給付総額は、保険納付金と資産収入の範囲で完結しなければならない。しかし現実は、まるでかけ離れた状態にある。
これは危機的状態である。年金積立金をとってみれば、2006年に150兆円あったが、2009年には128兆円、そして2011年は111兆円にまで切り崩された。このペースでは、あと15年で底をつくらしい。
国民にしてみれば、現役時代にせっせと支払ったお金がスッカラカンになると分かったら、暴動が起きても仕方がない。
政府関係者は、それが恐ろしいから、税金注入で何とか取り繕ってきたけれども、巨額な国債依存をことさら問題にして消費税増税を企てている。
政府は、増税すれば維持可能であるかのごとく偽っているが、現在「再増税」が最大の焦点となっているように、何度も増税し続けなければ、社会保障は成り立たない。
消費税増税では、社会保障の問題を解決することはできないと、はっきり認識すべきだろう。(寺)
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