環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加を表明した日本にとって、参加国から厳しい注文が相次いでいることを2日付各紙が報じている。
来日中のカトラー米通商代表部代表補は1日、在日米国商工会議所主催の討論会で、「問題はレベルの高い自由化をできる体制にあるかどうか、日本が政治的な意欲を持って難問に対応できるかどうかだ」と話し、日本に農作物や自動車での市場開放を強く迫った。
また、日本政府は1日、オーストラリアなど4カ国と行った2月の事前協議内容を公表。一部の国から、「すべての品目の関税の90~95%を即時撤廃し、残りも7年以内に撤廃すべき」という指摘があり、農作物など重要品目も例外品目にするのでなく、「段階的な関税撤廃で対応すべきだ」などの意見が出たという。
日本は、778%という高い関税をかけているコメなど農作物を中心とした品目を、関税撤廃の例外扱いとしたいため、非常に苦しい。だが、このTPPへの参加は、日本が新しいステージに上がるための、一つのステップと考えるべきである。
日本は世界の経済大国であり、不況と言いつつも、世界の中でも高い購買力がある。つまり、安いモノを売って儲けるという後進国的なスタイルから脱し、世界で作られたモノを買って、富を世界に回していく「輸入大国」としての役割を果たすべきなのだ。その一方で、生産が容易になった自動車や家電などより、宇宙・航空産業やロボット産業など、簡単にマネできない高付加価値型の産業にシフトしていくべきである。
農業についても、国内産の野菜や果物が、海外で高値で取引されている現状を見れば、「国内の農家が壊滅する」ことはない。もちろん、努力せず、消費者に満足される作物をつくれない農家は潰れるかもしれない。だがそれは、どんな業界でも当たり前のことだ。ほかにも、農業への株式会社の新規参入を増やしたり、農地を取得しやすくして大規模化を図るなど、生産性を高める余地はいくらでも残されている。
つまり、日本のあらゆる産業はTPP参加を機に、「世界から選ばれる商品」をつくる決意を固め、額に汗をかき、知恵をしぼって、もう一段の成長を実現することが求められているということだ。(光)
【関連記事】
2012年1月号本誌記事 TPP参加で輸入大国の責任を果たせ "Newsダイジェスト"