2012年4月号記事

編集長コラム

オバマvs.ロムニー? いずれも米国の衰退は避けられない

アメリカ大統領選の共和党の有力候補、ロムニー、サントラム、ギングリッチ3氏の守護霊のインタビュー をどう受け止めればいいだろうか。

守護霊の意見(潜在意識)は、その人の本心であり、信念でもある。年月が経つほどにそのビジョンが実現してくる。

前回2008年11月の大統領選の直後に行われた オバマ氏の守護霊インタビュー は、それを証明している(本誌2009年1月号)。オバマ氏の守護霊は、外交・軍事について「まず台湾を捨てる。次に日本を捨てる」「軍事予算を縮小したい」「アメリカは世界の警察ではなくなる」と語り、経済政策は「金持ちから税金を取って、貧しい人たちに与えたい」と述べた。

オバマ氏によるアメリカへの復讐劇

写真:ロイター/ アフロ

オバマ氏の守護霊はキリスト教国家アメリカへの復讐を強調していた。絵は、スペインに滅ぼされたアステカ王モンテスマ。

実際、その通りにこの3年間動いた。国防費は今後10年間で1兆500億ドル(約83兆円)減らす。

このままだと「2つの空母艦隊が退役する」(米海軍幹部)。すでに横須賀が母港の原子力空母ジョージ・ワシントンは2016年以降の燃料の予算がカットされ、退役待ち状態。核兵器の維持予算も減らされ、日本を守る「核の傘」が怪しくなる。次世代ステルス戦闘機F35の開発費も出なくなる。

オバマ大統領が「米軍のアジア・シフト」を宣言しても、金の切れ目が縁の切れ目。中国の中距離ミサイルを恐れ、沖縄の海兵隊がグアムやハワイ、オーストラリアへ“撤退"する。「捨てられる」のは台湾も同様だ。

国防費を減らす分は、そっくり社会保障費が吸収する。 オバマ氏肝いりの医療保険改革のために10年間で9400億ドル(約74兆円)を投入する。

これらがすでに3年余り前に"予言"されていた。

そして、 オバマ氏の守護霊の中心的なメッセージは、「今こそ復讐の時」というもの だった。オバマ氏の過去世は、白人に滅ぼされたインディアン酋長やアステカ王など、キリスト教文明と戦い、無念の死を遂げた人生が多い(本誌2009年2月号)。 私たちは今、キリスト教国家である超大国アメリカへの“復讐劇"を目にしているのだ。

ロムニー氏はマモン崇拝?

写真:AP/ アフロ

ロムニー氏の守護霊は、「マモン(拝金主義の神)を愛している」と語った。絵は、イギリスの画家イーヴリン・ド・モーガン作「マモン崇拝」。

共和党の候補者選びは長期化するかもしれないが、今のところ 最有力はロムニー氏だ。その守護霊の中心メッセージは、「(ウォール街を)むしろ愛している」「マモン(拝金主義の神)を愛している」だった。

マモンは「強欲」を司り、人間に金銭欲を植えつける悪魔。聖書には「汝ら神とマモン(世俗的な富)に兼ね仕えることあたわず」(マタイ福音書)とある。

ロムニー氏の信仰するモルモン教の初代ジョセフ・スミスや二代目ブリガム・ヤングは、専門家に「キリスト教にマモン崇拝(拝金主義)を持ち込んだ」と指摘されている。

実際、ロムニー氏は企業再生ファンドの元経営者で、「強欲」「ハゲタカ」などと批判を浴びている。買収した不振企業の不良部門を切り離して価値を上げてから売却する手法で巨額の富を築いたが、社員を解雇するケースも多々あったためだ。

空母、核、ステルス戦闘機をアメリカが減らすなら

「ウォール街の強欲さ」は、アメリカの成功者の精神とはかけ離れているようだ。石油王ロックフェラーは、「常に献金し続けなさい」という信仰深い母との約束を大富豪になった後も徹底して守り通した。

鉄鋼王カーネギーは「金持ちが神の国に入るよりは、ラクダが針の穴を通るほうがまだ易しい」(マタイ福音書)というイエスの言葉を実践するために、獲得した富を社会のために生かしきることを考え続けた。

ロムニー氏が「お金を社会に還元する」アメリカ正統の成功者の精神に反して、「強欲」で「マモンを愛している」ならば、ウォール街だけは復活しても、アメリカ経済全体の立て直しは難しい。

結局は、オバマ氏が再選してもロムニー氏が大統領になっても、 アメリカの衰退と、国防費の削減、「世界の警察」からの“撤退"は避けられないだろう。

であるならば、 日本がこれからやるべきは、アメリカがカットするものを持つことだ。原子力空母、核兵器、次世代ステルス戦闘機。アメリカからレンタルしてもいい。 消費税を増税するなら、社会保障よりも、そういう生きた使い方をしたい。

(綾織次郎)