7日のコロラド・ミネソタ・ミズーリの共和党予備選挙は、いずれもサントラム候補が勝利。優勢だったロムニー候補が敗れて指名の行方が分からなくなってきた。
9日付英紙フィナンシャル・タイムズはその理由として、宗教的な争点の浮上を挙げている。
- 共和党予備選の主たる争点は経済問題だったが、先週以来、避妊、妊娠中絶、信教の自由、同性婚といった社会問題が劇的に浮上してきた。
慈善団体KomenによるPlanned Parenthoodへの支援取り消し騒ぎ(注・妊娠中絶の是非をめぐる意見衝突。昨日の本欄参照)や、連邦裁判所が「同性婚を禁じたカリフォルニアの法律は違憲」(注・つまり同性婚を認める方向)との判断を下したことなどが重なったためである。 - こうした社会問題の浮上はサントラム候補に有利だろう。彼は社会問題については強硬な保守派で、レイプや近親相姦も含めていかなる場合の妊娠中絶にも反対している。
- オバマ政権は先週、「カトリックの病院や大学も含めて、いかなる雇用主も、従業員の避妊治療の医療保険を負担せねばならない」とした。カトリックの指導者たちは「信仰に反することの強制だ」として、オバマ政権への怒りを強めている(注・カトリックは基本的に避妊を認めない)。
- ここ数十年の大統領選では、社会問題に関して保守的な層の票がカギ(a decisive role)を握ってきた。2000年と2004年には彼らへのアピールに力を入れたブッシュが勝利したが、ここに力を入れなかったマケイン氏は2008年に敗れた。カトリックは最大の宗教浮動票であり、彼らの支持を得た者が、結果的には大統領になってきた。
米国では、雇用や税金など「カネ」の問題も大事だが、キリスト教の信仰に照らし、結婚や妊娠をめぐる「人間愛や家族」の問題こそ何より大切だと考える人が少なくない。
中絶という命の問題を真剣に考えるのは、ある意味、非常にまともな感覚だろう。昨今の日本は、人として本当に大切なことが選挙の争点になっているだろうか。(司)
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2012年2月8日付本欄 米国を二分するテーマ「妊娠中絶の是非」