大阪市の橋下徹市長が、市内で生活保護受給者がもっとも多い西成区の公立中6校で、就学援助が必要な生徒を対象に、学習塾などで使える月額1万円のクーポン券を新年度から試行的に配布する方針を発表し、波紋を呼んでいる。
今年7月以降、対象家庭にバウチャー(クーポン券)を月額最高1万円分支給。学習塾のほか、スポーツ教室や習い事などにも利用が可能で、塾などの業者は公募で選定する。
業者は利用者から受け取ったクーポンを市に請求して換金する仕組みだが、市は業者側にも1割の負担を求める方針で、1万円分のクーポンを換金する場合、業者側が受け取るのは9千円となる。
大阪府教育委員の陰山英男氏(立命館小学校副校長)は、「橋下市長は、学校より塾の方を信頼しているということなのか?」と疑問を投げかけるが、橋下市長は「(教育サービスの)供給者側の論理ではなく、受給者側が求めることを考える」として、この方針を変更するつもりはないようだ。
全国の公立学校で「ゆとり教育」が行われるようになってから、小学校から中学校、中学校から高校へ進学する際の学力不足が問題視されるようになり、大阪では私立の中高一貫校へ進学する子供たちも多い。そのため、中学受験を目指して、小学校低学年あるいは就学以前から塾などに通う子供も珍しくはない。
公立学校で必要な学力が身につけられない現実がある以上、子供たちの学力アップのために民間の教育サービスを取り入れようという橋下市長の試みは評価されてもよいのではないか。これを一歩進めれば、「塾を正式な学校として認める」という大胆な規制緩和策になる。塾のほうが教育レベルが高いのであれば、それも一つのアイデアだろう。〈宮〉
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