米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が13日、ユーロ圏9カ国の国債の格付けを引き下げた。

今回格下げされたのは、フランス、オーストリア、スロベニア、スペイン、スロバキア、マルタ、イタリア、キプロス、ポルトガル。

フランスは最上級から転落、キプロスとポルトガルは投機的水準へと下がった。ドイツは最上級を維持している。

ユーロ圏では、債務危機を克服すべく、融資体制の整備や財務規律の強化などの手を打ってきたが、今回の引き下げで、すっかり水を差された形だ。

本欄でも繰り返し主張してきたように、言葉も文化も歴史も経済力も異なる17ヵ国を一つの通貨、一つの金融政策でまとめること自体に問題がある。

財政政策の統合や財政規律の強化も、対策として間違っているだろう。

その意味で、昨今のユーロ危機が起きたのは必然であり、今回の格下げは、妥当に見える。しかし、金融システムは「信用」が命だ。その観点から考えると、格付け会社の「格下げ」は、金融システムの信用を破壊している部分がある。

格付け会社は90年代後半に、日本の山一證券や日本債券信用銀行を狙い打ちにするかのように一気に格下げし、信用不安を起こして破綻に追い込んだことがある。外資系企業が山一證券をはじめ、次々と日本の金融機関を買収したのはその後のことだ。

格付け会社は、乗っ取り狙いで"帝国主義的侵略"を図る性質があることは、知識として知っておいたほうがいい。

すると、今回の一連のユーロ圏の国債の引き下げには、別の狙いもあるように見える。

一つは、ユーロ圏の国債の信用を低下させ、その国債を大量に保有する欧州の金融機関を弱体化させて、買収を狙っているという見方。

また、そもそもユーロは、ドルやアメリカの経済覇権に対抗し、挑戦する目的で創設されているので、アメリカが「返り討ち」にしているという見方もできるだろう。

いずれにせよ、国際金融の世界は、一種の戦争でもあり、格付け会社は、決して純粋に公平な立場で格付けをしているわけではないことは知っておきたい。(村)

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