財政赤字の削減策を協議していた米議会の超党派特別委員会は21日、締め切りまでに合意が得られず、交渉の決裂を発表した。
委員会は8月の債務上限引き上げの際に設置が決まり、1兆2千億ドル規模の赤字削減策をめぐって協議を行ってきたが、増税や社会保障削減をめぐって両党の折り合いがつかなかった。
これによって、債務上限引き上げ法にのっとり、6千億ドルの国防費を含む1兆2千億ドルの歳出が2013年から自動的に削減される。
パネッタ国防長官は米軍の空洞化を懸念しており、共和党内にも強制削減を回避する法案を準備する動きがあるが、オバマ大統領はそうした法案に対して拒否権を使う方針を示している。
特別委員会の協議では、大幅な増税を求める民主党に共和党が反対し、共和党が提案した社会保障の削減には民主党が反対。来年の大統領選挙を前にして、左右のイデオロギー的な対立が鮮明になってきたといえる。
オバマ大統領は協議に関与しない方針を貫いたため、大統領のリーダーシップがなかったと批判する声もある。
しかし、交渉の決裂を待って「共和党が増税反対で足を引っ張った」という印象を与えれば、来年の選挙で有利にはたらく可能性があるのは確かだ。22日付の米ニューヨーク・タイムズ紙は「共和党は富裕層への増税で歳出のバランスを取るのにどの道反対するのだから、あとは有権者に決めてもらえばいいという計算があったのは明らか」とオバマ氏の手法を分析している。
昨今の格差デモもあり、富裕層への増税を求める声が上がっている。しかしそもそも財政危機を招いた原因は、景気よりも社会保障を優先し、大型予算で4兆ドルもの負債を積み上げたオバマ大統領の政策にあることを忘れてはならないだろう。
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