アメリカ議会の超党派特別委員会での交渉が決裂したことで、6千億ドルの国防費が削減されることになり、国防関係者から米軍の弱体化が一気に進むとして懸念が強まっている。

国防費については、今後10年間ですでに4500億ドルの削減が決まっており、これに6千億ドルが加わると、1兆500億ドル(約81兆円)にもなる。

パネッタ国防長官はこれまで2015年までに陸軍5万人、海兵隊約2万人の人員削減を打ち出している。

これに加えて、何が削減されるか。クリントン政権で国防長官を務めたウィリアム・コーエン氏(共和党所属)がインターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙で、米軍内部の見解を紹介し、共和党議員に妥協を求めている。

  • 「海軍は2つの空母艦隊を含む60の艦艇が退役し、海軍に20年から50年にわたる打撃を与える」(グリナート海軍大将)
  • 空軍は3分の1の戦闘機と4分の1の長距離爆撃機をあきらめるために、核抑止力が問題になり、「空軍は悲惨な結果を乗り越えることはできない」(シュワルツ空軍大将)
  • 陸軍は3分の1の機動大隊をやめなければならず、「受け入れられないレベルの戦略的、戦術的リスクを負う」(オディエルノ陸軍大将)
  • 「一つの大きな緊急事態に対応するのに必要な戦力レベルの下限を下回る」(アモス海兵隊司令官)

こうした深刻な戦力ダウンを共和党議員が引き起こそうとしているのが、アメリカ議会の「ねじれ」を表している。

しかし、このねじれは簡単には解消しない。大統領選がある2013年も続くし、もしかしたら2014年以降も続くかもしれない。そうなれば、米軍が「国防力を荒廃させ、国家のセキュリティーに取り返しのつかない傷を負わせる」(デンプシー統合参謀本部議長)ことになる。今回、南シナ海などでの海洋秩序に米軍が関与し続けることをオバマ大統領が表明したが、それも年々難しくなってしまう。(織)

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