10日付産経新聞で、本誌でもおなじみの石平氏がオピニオン記事を書いている。
同記事の主旨は以下の通り。
- 北京市内では、1週間で分譲住宅の平均価格が12・4%も下落。不動産価格下落の動きは全国の地方都市に広がっている。杭州の住宅価格の値下げ幅は10~20%、南京は約10%など。突出しているのが上海で、20%から40%の値下げが実施されている。
- 暴落をもたらした最大の原因は、中国政府がインフレ抑制のために実施してきた金融引き締め政策。その結果、不動産への投機資金が急速に枯渇して価格の暴落が起きた。
- 今後もインフレ傾向は続き、政府は金融引き締め策を堅持するだろう。すると、不動産価格の暴落は誰も止められない。世界経済史上最大の崩壊劇は今、目の前で演じられている。
「バブルだ」と言われ続けてきた中国経済の驚くべき実態が、石平氏の近著『【中国版】サブプライム・ローンの恐怖』にくわしく書かれているので、あわせて読むと流れが分かる。こちらからも要旨を紹介しよう。
- 2008年リーマン・ショック時に中国の不動産バブルは崩壊しかけたが、翌09年春になると、突如息を吹き返して不動産バブルが再燃、史上最大の勢いで上昇した。
- その原因は、中国政府による「徹底した財政出動」と、年間115兆円もの「集中豪雨式の新規融資」。この金額は中国のこの年のGDPの3割近くにもなる(これが中国GDP急増の正体だ)。
- この大量のお金が、実体経済を伴わない「不動産投機」に流れ込んだ。2009年の不動産購買者の8割が「住むためではなく、投資目的で不動産を買った」という。
- しかし、政府がお札を大量に刷った結果、深刻なインフレが発生した。政府は躍起になって政策金利を引き上げるなど金融引き締め政策を実施したが、インフレが収まる気配はまったくない。
- 金融引き締めの結果、投資は冷え込み、今年6月時点で北京市内の売れ残りの不動産が12兆円分もある。
- 今の不動産投機を支えているのは「銀行からの無制限な融資拡大」と、それによって支えられているバブルで、まさに「中国版サブプライム・ローン」といえる。
中国経済はまさに「張り子の虎」だ。貧富の差が拡大し、一般庶民はインフレに苦しみ、一向に楽にならないばかりか住宅ローンに追われて破産が相次いでいる。一方で富裕層は不動産投機に血眼になる。だがそのバブルも終わりを迎え、崩壊が始まった。
明日も石平氏の書籍から紹介してみたい。(仁)
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