仏カンヌでの20カ国・地域(G20)首脳会議で4日採択された行動計画では、先進国が財政健全化を促すことで一致した。

日本は野田首相が「2010年代半ばまでに消費税率10%への引き上げ」を表明した。

フランスは数十億ドルの予算削減を行う方針。

アメリカは、オバマ大統領が提案した景気・雇用対策(道路インフラ投資など約34兆円)が10月、上院で否決された。オバマ氏は法案を分割して再提案し、妥協を図ろうとしているが、共和党保守派が「小さな政府」を唱え、新たな財政支出に反対している。

イギリスもキャメロン政権が緊縮財政路線をひた走っている。

ユーロ危機を生み出しているギリシャやイタリア、スペインなどの緊縮財政はやむを得ないにしても、先進国がこぞって財政健全化、緊縮財政を進めていいものか。

サブプライムローン危機以降、企業も家計も多額の借金を抱え、その返済に専念している、いわゆる「バランスシート不況」の状態だ。多くの企業が新たにお金を借りて投資しないし、家計も消費を抑えるため、極端なデフレ状態に陥っている。

こういう場合は、政府が借金をしてでもお金を使って公共投資やその他雇用対策を行わなければならない。

このデフレ局面で財政健全化、緊縮財政に走って大失敗したケースは過去に何回かある。

橋本政権が97年から98年にかけて、消費税引き上げ(3→5%)、公共事業の削減などの緊縮財政を強行。98年と99年にマイナス成長に陥り、自殺者3万人以上が続いている。

古くは、米ルーズベルト大統領が1929年の大恐慌の後、いったんは公共投資中心のニューディール政策を実施したが、1937年に打ち切ってしまい、1938年から大不況に見舞われたケースがある。再び1939年から積極財政に転じたうえ、日米戦争が始まったことで、やっと息を吹き返した。

G20では高らかに「先進国の財政再建」をうたったが、これでは先進国がそろって「橋本不況」や「ルーズベルト不況」に突っ込んでいくことになる。この危機を脱するには、少なくともユーロ危機の元凶の南欧諸国を除き、先進国が財政赤字をいったん横に置いて、積極財政を打ち出さなければならない。(織)