1日のニューヨーク外為市場では円高・ドル安が進行し、一時的に戦後最高値に迫る1ドル=76円29銭を付けた。

アメリカは土壇場でデフォルト(債務不履行)を回避したが、米国債格付けが引き下げられる懸念もあり、中長期的な財政不安からドルが売られ、円が買われる展開となった。この円高を受けて、日本政府は日銀などと市場介入に関する協議に入ったもようだ。

急激な円高の進展は、政府・日銀が日本経済の根本的な問題への対策をサボってきたことの証左でもある。

日本経済の最大の問題はデフレなのだ。デフレとは供給に対して需要が少ない状態であり、市場の中で物に対してお金が少ない状態である。

2008年のリーマンショック以降、米連邦準備理事会(FRB)がデフレ対策として金融資産を3倍に増やして市場の貨幣量を拡大したのに対して、日銀の保有資産はさほど増えていない。ドルの供給量に対して日本円が少ないため、これが円高の呼び水の一つとなっている。

また、デフレ期の財政政策では、消費や企業投資を応援し、円高を味方に付けて内需を拡大することが大切だが、民主党政権はもっぱら公共投資削減と増税を示唆しては需要を冷え込ませている。

市場介入という小手先の手段は、問題の核心ではない。結局は、減税や公共投資、金融緩和によって需要を刺激してデフレを克服し、経済成長を実現する意志が現政権にあるかどうかである。

日銀総裁の白川方明氏は金融緩和の効果は見込めないと再三主張し、デフレを放置してきた。

思えば、白川氏が総裁に決まったのは、福田内閣下のねじれ国会で、当時野党の民主党が日銀総裁人事を政局の人質に取り、自民党側が提案する他の候補を突っぱねたことによる。

経済・金融政策いずれも、現与党の無能と先見性のなさに端を発しているのである。

平時ですらまともな経済運営ができない政府が、震災不況をどう乗り越えられるというのだろうか。現政権が粘れば粘るほど、日本経済は窒息してゆく。

【参考記事】「日中再逆転」 http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=1417