「ドービルの外交ダンス」(Deauville’s dance of diplomacy)――。Dの子音で頭韻を踏んだそんな見出しで今回のサミットを皮肉った記事が、28-29日付米紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューンに出ている。パリ在住の女性ジャーナリストによる署名記事で、感性を生かした切り捨て方が小気味いいので少し紹介する。
- 現実を直視しよう。「この手のサミット会議は退屈だ」と。疲弊した指導者たちが国民の血税を使って地球をわざわざ半周して集まり、引きつった微笑を浮かべて記念撮影に収まるが、その中には女性が少なすぎる。指導者たちは善き意図を表明した宣言に署名するものの、その文言は事務方が事前に作文したものだ。宣言に盛り込まれた野心的な検討課題は直ちに忘れ去られる。
- そもそも、いつも問われるのは、豊かな国だけで集まることは貧困国に対する侮辱ではないのかという問いだ。今日の世界の力関係をよりいっそう反映しているG20という場があるのだから、G8は解消してはどうか。
- ただ、この手の儀式に意味があるとしたら、少なくとも開催国のホスト役(今回はサルコジ仏大統領)が国民からの支持を高められることだ。
今回のサミットの実り少なさを女性特有の直感で見抜いたような記事だが、やはり拍子抜けの最大の理由は、原子力発電の今後に関する合意の不明瞭さだろう。開催国フランスは世界最大の原発国であり、サルコジ大統領は「最高水準の安全性」をめざす合意をまとめることで「脱原発」の流れを止めることを狙った。オバマ大統領も福島第一原発事故の直後から、米国の原発維持を明言している。
ところが事故の当事国・日本の菅首相は、日本が再生可能エネルギーの割合を増やす考えを強調し、「脱・原発」という逆方向を向いている。米仏の冷静な動きに歩調を合わせれば、浜岡原発を止める必要もなく、節電から来る経済停滞を招く必要もなかったのに、菅首相はその機会を逃した。
弊誌7月号(5月30日発売)の特集記事「原発を救え!」で主張している通り、日本のエネルギー事情を考えれば現状において「脱・原発」という選択肢はあり得ない。他のサミット参加国がいちばん聞きたいその点を明言できない人物は、日本国の指導者の立場をすみやかに退くべきである。(司)
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