宮城県の村井嘉浩知事が震災復興策として、株式会社の参入を認めるなど漁業を自由化する「水産業復興特区」を打ち出した。これに地元漁協が猛反発。それでも村井知事は「撤回しない」として粘り強く理解を求めている。菅政権が復興の青写真を示せない中、村井知事は精力的に復興プランを打ち出しており、注目を集めている。
村井知事の構想は、(1)個人経営の漁業者が独占している漁業権を株式会社に開放。漁業者とその企業が合弁会社を設立することもでき、民間の資金が入って漁船や関連施設を再建しやすくなる。(2)漁や養殖を個々の漁業者単位ではなく、組織的に行う協業化を進める。(3)政府が漁業施設を国費で整備して一時国有化し、その後に民間資本を入れて株式会社化する――などだ。
これに対し、宮城県漁協は1万数千人の組合員の署名を集め、真っ向から反対を突きつけた。その理由として「先祖代々守ってきた漁場を企業に奪われないようにし、子々孫々に伝える」「企業が入ってきたら漁業者がサラリーマン化して、漁師の生き様を否定する」などを挙げている。
東日本大震災による宮城県内の水産被害は現時点で約4千億円。すべて税金が投入されるわけではなく、漁業者が資金を出し合わなければならない。そこで復興のスピード・アップのために村井知事が自由化政策を打ち出したというわけだ。
メリットとしては、漁業施設の迅速な再建のほか、高齢化し後継者不足の漁業に若い世代が入ってくることや、大手商社や食品メーカーなどの参入によって海外を含む販路が拡大することなど数多い。
日本の漁業は、1年間に辞める人が約1万人に対し、新規の就業者は数百人という。つまり、漁業をやりたい人がいても入って来れない状態で、憲法22条の「職業選択の自由」に違反している。「漁場を子孫に伝える」とか「漁師の生き様」のために憲法違反を続け、復興も遅らせるなどということがあってはならない。村井知事の奮闘に期待したい。(織)
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