米上院軍事委員会のカール・レビン委員長ら民主・共和両党の有力3議員が11日、沖縄県の米軍普天間飛行場問題に関して、名護市辺野古への移設を断念し、米軍嘉手納基地(同県嘉手納町)への統合を検討するよう米国防総省に提案した。

3議員は、沖縄県民の反対の根強さ、グアムの受け入れ施設の整備遅れ、震災による日本政府の巨額財政負担の発生などを理由に、2006年の日米合意である普天間の辺野古移設と、沖縄の米海兵隊の一部のグアム移転を中心とする米軍再編(トランスフォーメーション)は「非現実的」と主張。

米海兵隊の普天間飛行場の機能を米空軍の嘉手納基地に統合し、嘉手納の航空部隊の一部をグアムや日本国内の別の米軍基地に分散することで、沖縄の負担軽減も図れるという。背景には、12年間で国防予算を4000億ドル(約34兆円)削減する、オバマ政権の財政再建計画がある。

しかし、統合すると、有事の際に滑走路が十分に確保できなくなる危険性があり、分散によって嘉手納そのものの規模も縮小する。単純に沖縄から米軍基地が一つ減り、米軍の軍事力が弱まる。

国防予算を承認する権限を持つ軍事委員会の指導部による指摘は、今後の日米両政府の交渉にも影響を与えそうだが、統合案はこれまでに何度も浮上しており、海兵隊のヘリと空軍の航空機の混在で高まる危険性や、騒音問題を抱える地元の反対が強く、立ち消えになってきたのも事実。結局は、普天間に基地が固定化するという見方も強い。

一つだけ確かなのは、米側にも波及したこの迷走を“主導”しているのは、日本の民主党政権であるということだ。

軍事力の拡大を続ける中国・北朝鮮への抑止力として、地政学的に見ても沖縄の米軍の存在は日本人にとって生命線。今回の提案は、沖縄に06年の合意案の受け入れを迫るための高等戦術という見方もあるが、菅政権は早々に辺野古移設を宣言し、日米関係の安定を図らなければならない。(格)

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