2011年6月号記事

増税ありきで議論される復興財源の不思議

東日本大震災で、鉄道の復旧が遅れ、電力供給も不足し、経済活動が大幅に停滞しているというのに、政府は本気で「増税」を狙っているようだ。

震災の1カ月後、鳴り物入りで発足した復興構想会議では、14日の初会合で、五

い おきべ百旗頭真議長がいきなり「震災復興税」の創設を提起した。民主党からも、消費税や所得税、法人税などを一定期間増税する案を検討しているという。

彼らの考えでは、消費税を2%上げれば年間5兆円の税収が見込めるため、5年で25兆円の財源が確保できるという。

しかし、現実にはそんなにうまくいかないだろう。現在、消費税収は10兆円を切っており、実際は1%当たり2兆円の税収にもならない。ただでさえ震災でダメージを受け

ている日本経済に2%もの増税を図れば、景気はさらに冷え込んでしまう。しかも、消費税の場合、実務上、被災者を増税の対象外にすることが難しい。仮に対象から外せたとしても、その分税収が減るため、計算の前提が崩れる。

1997年に2%消費税を上げた時は、好景気だったにもかかわらず、不況を招き、かえって税収を落としている。デフレが本格化したのはこの頃からだ。つまり、不況下の増税は、禁じ手なのだ。震災直後に増税の議論を出すこと自体、正気の沙汰ではない。