この国の政治家は、東日本大震災の打撃をどこまで自分たちの責任や痛みとして捉えているのか? そう思いたくなる発言が、二人の閣僚の口から出た。
与謝野馨経済財政担当相は28日の閣議後会見で、3月の鉱工業生産指数が過去最大の落ち込みとなったことについて「相当衝撃的な数字だ」と評した。そのうえで「予想よりも早い段階でサプライチェーン(部品供給網)は回復する」と期待感も示しはしたが、「相当衝撃的」という言葉は何のために口にしたのか?
例えば医者が患者に「検査結果は相当衝撃的な数値です」と言ったら、患者はショックで病状が悪化しかねない。「大変だぞ、悪くなるぞ」とマイナスの可能性を強調するのは貧乏神や死に神のやることで、一国の盛衰に責任を持つ政治家の言葉としては不適切だ。閣僚の言葉が国民の心に与える影響をもっと考えてもらいたい。
また海江田万里経済産業相は同じく28日の閣議後会見で、原発事故に伴う賠償金などを捻出するため東京電力が行った役員報酬の半減について「一律50%カットでは足りないのではないか」と述べた。東電は部長級などの年収も3割前後カットする方向で検討、労働組合に対しては年収の約2割削減を提案している中での言葉だった。
東電の役員報酬が半分カットでも足りないと言うなら、東電の原発事業を監督規制する原子力安全・保安院の職員約800人も、事故の監督責任をとって手当や給与をカットすべきではないか。同保安院が所属する経済産業省の幹部や海江田大臣、さらには政府全体の責任者である菅首相も同様だ。少なくとも、自分たちの収入は安泰のまま東電にだけ「もっとカットを」と言うのはおかしくないか。
民主主義社会では政治家は国民の代表であり、官僚は国民への奉仕者(civil servant)であって、決してお上(かみ)や特権階級ではない。国民の気持ちを我が身のこととして感じる姿勢を公務の原点としてほしい。(司)
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