東日本大震災による被害が大きかった岩手、宮城、福島3県の犠牲者のうち9割以上は水死であったことが19日、警視庁の発表で明らかになった。津波による犠牲者がいかに多かったかが改めて浮き彫りになった。身元が判明した犠牲者の65%は60歳以上が占めており、逃げ遅れた高齢者が多かったことも指摘されている。
20日付読売新聞のなかで、津波に詳しいある識者が、「今回の津波は、内陸の4~5キロにまで到達する前例のない規模」「過去に津波を乗り切った経験があるお年寄りは、かえって逃げる判断が遅れた可能性もある」と指摘している。
今回の震災を巡って、「想定外の津波さえなければ」という論調の意見は数限りなく発信されている。しかし、今回の被害の背景には、「コンクリートから人へ」に象徴される危機管理能力の不足があったことから眼をそむけてはいけない。本誌5月号でも指摘したように、実は、想定する津波の高さにすら届かない低い堤防しか備えていない海岸が、岩手県で54キロ、宮城県で75キロも残されていたのだ。
「人災」あっての「天災」だと捉えなければ、そこから教訓を学ぶことさえできなくなり、今後も災害対策は後手に回り続けるだろう。よく言われている「高齢者の施設を高台に移す」という対策では消極的だ。民主党が事業仕分けで廃止した「スーパー堤防」や、津波の心配が生じた時にだけせりあがる高さ20メートル程度の「直立浮上式防波堤」を造るなど、政府には天災から国民を守る力強い提案を出してほしい。(雅)
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