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《本記事のポイント》

  • トランプ大統領が条件付きで航空会社に経済支援を行う
  • 航空会社は、キャッシュフローの96%を自社株買いに充て、財務体質が弱くなっていた
  • 企業は「健全な経営」を目指すべき

トランプ米大統領は新型コロナウィルスの影響による企業倒産と失業増を防ぐため、2兆ドル(約220兆円)の経済対策を行う。その中で、航空会社に580億ドル(約6兆3000億円)を支援する。

野党の民主党は「労働者を優先すべき」と主張してきたが、政府資金を企業の自社株買いや経営陣の報酬増に使わないことなどを条件に合意した。

航空会社は、人件費や機体の整備費などの固定費の負担が大きく、一般的に搭乗率5~6割が損益分岐点と言われている。コロナの感染拡大でキャンセルが相次ぎ、資金繰りが困難になっていた。

株主の評価をあげようとする企業

航空会社の支援は「株主至上主義」という問題を浮き彫りにした。

米ブルームバーグがこのほど報じた記事によれば、大手航空会社4社は合わせて、過去10年間のキャッシュフローの96%を自社株買いに使っていたという。

会社が稼いだお金や借り入れした資金を、自社株買いや配当に充てて、株価をつり上げ、株主に利益を還元。その結果、自己資本比率が低くなり、「自ら財務危機を招いた」と批判されている。

株主至上主義の下では、会社は短期的な経営を目指すようになりがちだ。10年後に利益を生み出すかもしれない研究費や人件費に費やすより、自社株買いや配当に充てた方が株主の利益になる。また、今回のコロナ問題のような非常事態に備え、財務面の余力をつくることも、投資家からの厳しい目にさらされて十分にできていなかった。

航空会社に限らず、欧米社会では「会社は株主のもの」という株主至上主義が"常識"となっている。

だが、米国内では、その常識を見直す動きも起きている。米最大規模の経済団体ビジネス・ラウンドテーブルは昨年、「株主第一」をやめ、従業員の能力開発への取り組みや、地域社会への貢献などを含めた事業運営に取り組む方針を発表した。

株式会社は株主の資本によって成り立っているため、株主に利益を還元することは、もちろん大事なことである。しかし、不況にも強く、健全な経営を目指すためにも、行きすぎた株主至上主義の考えを改めることも重要だろう。

(長田勇気)

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