《本記事のポイント》

  • バブル崩壊を招いた取引の規制
  • 土地や株で儲けることを悪とみなす日本の風潮
  • アイデアから富を生み出す時代の意識変革を

2020年、オリンピックの開催を控え、都市部を中心として基準地価の上昇がみられ、不動産価格も上がっている。こうした時には、90年代初頭の「バブル崩壊の再来」といった議論が繰り返し起こりがちだ。

そもそも、90年代にバブルがつぶれた背景には何があったのか。来年以降の日本経済のかじ取りを間違えないためにも、専門家のインタビュー記事から教訓を学んでおきたい。

(※2013年6月号本誌記事を再掲。内容や肩書きなどは当時のもの)

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Interview

現代人間科学研究所 所長

飛岡健

(とびおか・けん)現代人間科学研究所所長。1944年生まれ。東京大学工学系研究科博士課程(航空工学宇宙工学専攻)を修了し、75年に現代人間科学研究所を設立。官民問わない委託研究とともに、講演・執筆活動を行っている。『橋下徹は坂本龍馬に成れるか?』(太陽出版)、『官製不況―大蔵省・日本銀行が犯した七つの大罪』(ごま書房)など著書多数。

※記事はインタビューをもとに編集部がまとめました。

バブル問題の始まりは、1985年のプラザ合意(注)にさかのぼります。円相場が切り上げられ、輸出に頼っていた企業の経営が難しくなりました。円高不況を何とかしなければということで、金融緩和など、様々な政策が取られたのです。

その中で当時の国土庁が、今後の経済発展で都市部のオフィス需要が高まるという予想を出しました。そこで、不動産・建築業者が地上げをしてでも、活発な不動産投資を行い、結果的に地価が高騰していきました。

その際に流行ったのが「土地転がし」です。例えば、昨日10億円で買った土地を、今日12億円で売れれば、1日で2億円の利益が出せる。このように、地価の高騰を利用して利益を上げる人たちが出てきたのです。

この人たちは違法行為をしているわけではないのですが、一般庶民からすれば、浮利を貪っているように見えます。「有識者」と呼ばれる人たちや政治家は、庶民の感情を重視しますから、土地の売買を問題視するようになっていったのです。

また地価の高騰は公共にとっても、悩ましいことでした。公共事業のために土地を買おうとしても、あまりに高くついてしまうからです。そこで行政の側にも、土地の価格を下げようという動機が生まれました。

(注)85年9月に、米ニューヨークのプラザ・ホテルで開かれた、先進5カ国蔵相・中央銀行総裁会議(G5)で交わされた取決め。日本の好調な輸出を背景にした貿易赤字がアメリカで問題視される中、各国が為替市場に介入してドル安に誘導することが決まった。

日本は「なんとなく資本主義」

そこで政府・日銀は、規制強化で景気を抑えにかかります。金融政策では公定金利を上げ、市場に流れるお金の量を絞りました。また大蔵省は、不動産業者に対する銀行の貸し出しを制限する、いわゆる「貸し出し先規制」という通達を出し、不動産取引の縮小を目指しました。

バブルの際には、投資が活発で、地価と株価がダブル・スパイラルで上がっていきました。しかし、政府・日銀が土地の取引を規制したところ、今度は地価と株価が同時に値下がりしていったのです。資産価値が下がればお金を使おうというマインドがしぼむし、土地を担保にお金を借りることも難しくなっていきます。そうして、経済全体が委縮していったのです。

バブル潰しの問題の根本は、日本人の「文化と考え方の問題」でしょう。日本には株や土地で儲けることを、なんとなく悪と捉える風潮があります。

結局、日本がやっているのは「なんとなく資本主義」なのです。投資で利益を得るのは、資本主義社会では当たり前のことで、これを「悪」と言ったら資本主義の根本が崩壊します。ところが日本では「バブルは悪い」というなんとなくの雰囲気が蔓延してしまいました。ヒロイズムを嫌う、均質的な日本社会の特徴も背景にあるのでしょう。

世界に発信する国になれ

当時の日本人は、上がってゆく地価を見て「高すぎる」と言っていましたが、世の中が工業社会から情報社会へと変わったことを、政府も国民も理解できていなかったのでしょう。

バブル期には、「その土地を利用してどれだけの収益を上げられるか」を基準にして地価を決めるべきだという収益還元説があり、それが地価高騰を批判する論拠にもなっていました。

確かに、ある土地に単に工場を建てるだけなら、そこで生みだせるものには限りがあります。でも同じ土地でも、そこで情報や金融に関わる仕事をすれば、莫大な収益が上げられるかもしれません。「その土地で生みだせる利益には限りがあるから、地価を制限する」という発想は、一つのアイデアから無限の富が生まれる情報社会においては、的外れなのです。

これまでの日本は、お手本となる海外の技術を仕入れ、改良することに長けてきました。でも情報社会では、最初にアイデアを思いつき、それを世界に発信する「ファースト・ハンド・カントリー」になることが最重要です。東大出身のベンチャー経営者がほとんどいないことからも明らかなように、日本の教育はこうした価値観を欠いています。世界に発信する国になることが、日本経済の抱える本質的な課題だと思います。(談)

【関連書籍】

『日本の繁栄は、絶対に揺るがない』

『日本の繁栄は、絶対に揺るがない』

大川隆法著 幸福の科学出版

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