東日本大震災では発生から25日までの2週間で、全国から日本赤十字社に約401億円の義援金が寄せられた。阪神大震災の164億円(同じく発生2週間後)に比べ2倍以上の額の善意が届けられていることになる。だが28日付産経新聞は、この多額の義援金を現実に配分する難しさについて報じている。

日赤などに集まった義援金は通常、被災した都道府県が設置する「義援金配分委員会」に全額渡され、委員会に市町村や日赤などが加わって配分対象や金額を検討し、被災者に行き渡るようにする。阪神大震災では発生から半月後に第1次配分として、死者・行方不明者1人当たり10万円の見舞金を家族に配布した。

しかし今回の震災では、発生から半月以上経った今も見舞金の配布どころか、配分委員会を立ち上げた自治体さえまだない。被災が広範囲にわたる上、まだ全容もわからないため、配分しようがないのだ。宮城県社会福祉課は「なるべく早く被災者の元に届けたいが、公平に渡すことも重要。把握できていない被害もあるので、今分かっている方々だけに渡すのは難しい」と話しているという。

確かに難しい問題だが、日本の役所は一般に「差をつけてはいけない」という平等感覚が強いため、実態把握に時間をかけすぎてサービスそのものの機動性に乏しくなりがちだ。支援はすべての人に公平に行き渡るのが理想だが、一方でスピードも要求される。一時的に差がついても、追ってその差をカバーする方法もあるはずだ。行き過ぎた平等感覚で自らの手を縛ることなく、できる支援からしていく決断力も発揮すべきだろう。(司)

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