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《本記事のポイント》

  • インドで中国製SNSアプリが爆発的に普及
  • 中国共産党も、新たな"機関紙"としてSNSアプリに注目
  • 中国政府に国中の情報を握られないよう、対策が急務

中国製アプリが、インドで億単位のユーザーを獲得している。インドでの中国製SNSアプリのダウンロード数は昨年、9億5000万件を超えたという。

その代表が、字節跳動(バイトダンス、Bytedance)によるショートムービーアプリ「Tiktok」やニュースアプリ「Helo」、アリババが開発したWebブラウザーアプリ「UC ブラウザー」など。「Tiktok」の利用者は、インド国内だけですでに約2億6000万人に上る。

人気の秘密は、低価格なスマートフォンやデータプランに加え、速度の遅い回線やメモリー容量の少ない端末に対応したアプリの開発だ。また、文字が読めなくとも直感で操作できるように動画や音声入力が駆使され、満足に教育を受けていない人々にも普及し始めている。

キーボードを打ってメールを送ったり、入力検索をしたりしない新しいターゲット層に、中国企業が柔軟に対応し、ユーザーを勝ち取っているということだ。

人気アプリを共産党機関紙にしたい中国政府

背景には、「政府の監視が厳しい中国国内よりインドの方が商売をしやすい」という中国企業の事情があるようだ。ただ、億単位の人に影響を与えるツールに、中国当局が興味を示さないはずもない。

中国の習近平国家主席は共産党の機関紙として、新聞に代わる情報発信手段の構築を強く主張している。こうした方針を受け、共産党の指導下にある官製メディア「光明日報社」や「浙江日報」はすでに、TikTokを使ったニュース動画の配信を行っている。

中国製のアプリが、中国政府のプロパガンダの発信機関になってしまう可能性は否めない。また、企業が利用者の個人情報を共産党に提供しない保証はない。

実際、インド政府の高官が過去に、Webブラウザーアプリ「UC ブラウザー」の使用禁止を検討したこともある。同ブラウザーが、データを違法に外部に送信しているというのが理由だ。

こうした情報の不正収集などを防ぐため、日印両政府は現在、次世代通信規格「5G」に関するサイバー攻撃対策で連携する方針を固めている。爆発的なアプリ普及にも対応できるよう、さらなる関係強化が急務だ。後手に回った分だけ、被害も大きくなる。

(片岡眞有子)

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