3月23日付のニューズウィークでハーバード大学歴史学部教授のニーアル・ファーガソンが、米国はリビアに対し軍事支援よりも道徳的規範を示すべきであり、このことは冷戦終結の歴史からも学べると述べて、以下のことを指摘している。
・ 冷戦が終結したのは、共産圏の独裁体制の正当性が内部から崩壊したため。それに貢献したのが75年の欧州安全保障協力会議で採択された「ヘルシンキ宣言」だ。
・ 同宣言は、調印した35カ国のうち8カ国が独裁的な共産主義国家だったにも関わらず、「参加国は万人の人権および思想・信条の自由などの基本的自由……すべての人の平等と自己決定権を尊重する」との文言が盛り込まれ、反独裁体制運動を展開するための武器になった。
・ だが今、国連人権理事会は、人権重視とは言い難いサウジアラビアや中国、キューバが理事国を務め、3月初めになってようやくリビアの資格停止を決めるなどの欺瞞がある。
・ 新たな「現代版ヘルシンキ宣言」が必要とされている。
確かにこれまで米国は、イスラムが絡む地域に対し軍事介入はしても、適切な道徳的模範を示すことには成功していないようだ。
イラクやアフガンへの軍事介入は泥沼化しているし、これまで黙認してきたリビアの独裁政権に今は軍事介入しようとし、今後もし同地域でイスラム過激派が台頭すれば、今度はそれに対して軍事介入するしかなくなるかもしれない。背景には米国のイスラム圏に対する普遍的とは言い難い姿勢があり、ブッシュ前大統領にはキリスト教原理主義、逆にオバマ大統領にはイスラム偏向が垣間見える。
ファーガソン氏の指摘する通り、根本的に問題を解決するには、より普遍的な価値観に基づく国際規範が必要だろう。(由)
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