東日本大震災の甚大な被害が明らかになりつつある中で、11日付ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は被害の大きさを伝える記事と共に、標題のようなタイトルの記事も載せている。他国のことなので冷静でいられる面もあろうが、災害の悲惨さばかり強調しやすい日本の報道とは一線を画している。以下「・」の部分は要約抜粋。
・近年の日本の建物は世界一大地震に強い構造を備え、日本の海岸線には津波への注意を呼びかける表示板が並んでいる。昨年のハイチ地震では粗悪な建築のせいで死亡者数がはね上がり、2008年の中国の四川大地震では建築基準が守られていないため死亡者数が増えた。これらに比べて日本の建築基準は世界一厳しく守られている。もちろん、あらゆる災害をクリアできる基準など有り得ないが。
・2004年のインド洋津波では避難訓練の経験がない人が多く、海岸近くでぐずぐずしていた多数の人が亡くなった。日本のニュース報道によれば、今回の津波に襲われた地域で当初は行方不明とされていた人々が、学校や公民館に避難して無事だったケースがあった。やはり津波に対しては事前の教育と避難訓練が非常に有効なようだ。
日本のマスコミには、今回のような大災害のさなかに「まだしも被害が少なく済んでいる面がある」などとは言いにくい雰囲気がある。「起きてしまった不幸」ばかりでなく「未然に防がれた不幸」にもフェアに目を向け、大災害の中でもポジティブな見方を失わない点に、米国ジャーナリズムのバランス感覚を見る気がする。(司)
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